本日は、先日読み終えた漫画から。
秋乃茉莉:作『ワトソンの陰謀 ~シャーロック・ホームズ異聞~』 (1)(2)(3)
“とある事情”から就職難に陥った学生・白木焔と、こちらも別の“とある事情”から日中は屋外に出ることができない青年・渡瀬蒼による探偵コンビが活躍する作品。
名前の「音」の響きからすると白木焔=シャーロック・ホームズ、渡瀬蒼=ワトソンということになるのですが、推理を担当するのが渡瀬蒼で実働役が白木焔…という捻りが入ってます。
本作の特徴は事件の依頼人が「霊」というところ。主人公ふたりの“とある事情”も、この世界観に因るもの。コナン・ドイルの作品におけるホームズは心霊現象なんてまったく信じない超現実主義者として描かれているのですが、ドイルがもしホームズ物語執筆初期から心霊主義に傾倒していたら(※)、あるいはこの物語のように「霊」の存在を取り入れていたかもしれませんね…。
全3巻で展開されるエピソードは…
第1巻:「まだらの紐」「ボヘミアの醜聞」「踊る人形」
第2巻:「花婿疾走事件」「サセックスの吸血鬼」「ぶな屋敷の怪」
第3巻:「瀕死の探偵」「緋色の研究」「オレンジの種5つ」
と、いずれもコナン・ドイル作によるホームズ物語のタイトルを冠しており、物語自体もそれぞれの作品の設定や事件の質感などをうまくアレンジして取り入れてるなぁ…という印象がありました。個人的には「ボヘミアの醜聞」が依頼主の意外性や、原作アレンジが斬新さが印象に残っていますね。
ホームズ作品の“パスティーシュ”としても、楽しく読むことができる作品でした。
(※)コナン・ドイルは晩年、心霊主義に傾倒しており、心霊主義に関する著作を出したり、後にコティングリー妖精事件と呼ばれる幼い姉妹が撮影した妖精の写真の真偽を巡る論争に「実在支持」の立場で参加したりしています。