ミステリー作家・島田荘司さんによる『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』。数年前に購入したムック本で存在は知っていたのですが、このあたりの店では新品・中古とも出会うことがなかったのですが、先日アマゾンに手頃な価格で出ていた中古を入手することができました。
タイトルに登場する“漱石”は、文豪・夏目漱石。
夏目漱石がイギリス・ロンドンに留学していた1900年~1902年は、まさにホームズが活躍していた時代で、なおかつ漱石が個人レッスンを受けていた教授の住まいはベーカー街の近くだったのだそう。もしかしたら、漱石はホームズと出会っていたかもしれない…。
そういった夏目漱石の留学の史実と、ホームズ物語の時代とを巧みに組み合わせ、西洋(ホームズ)と東洋(漱石)の知識人が協力して事件解決に取り組む…という、なんとも豪華な物語を作り上げたのが、本作です。
最大の特徴は、いわゆる“語り手”をジョン・ワトソンと夏目漱石の双方が担っていること。お互いのバックボーンが異なるので当然ではありますが、同じ体験談のはずなのに、それぞれの立場や見方によって“相違”が生じる。そんなお互いの“相違”が、1つの出来事をきっかけに歩み寄りを見せ、やがて“一致”に向かっていく…。
彼らが交流するに至った事件の意外性やその解決へのプロセスはもちろん、ホームズ&ワトソンと夏目漱石との人間関係の変化(深化)も丁寧に描かれていて、楽しい物語でした。
1つの物語の中で“語り手”が変わっていく手法は苦手だったのですが、この物語のように、この手法だからこそ成立する物語もあるのだなって
- 漱石と倫敦ミイラ殺人事件 (光文社文庫)/島田 荘司
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漱石とホームズといえば、数年前にこんな本も読みました。 - 吾輩はシャーロック・ホームズである (角川文庫)/柳 広司
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ちなみにこちらは、漱石が自身をホームズだと思い込む…という設定。
- 吾輩はシャーロック・ホームズである (角川文庫)/柳 広司