“スライド奏法”の存在を知ったのは、以前書いたとおりエリック・クラプトンの“LAYLA”なのですが、エリック・クラプトンを聴くようになってから興味を持ったジャンルが、クラプトンが心から愛してやまない「ブルース」。(原則として)12小節/3コードから成立するごくシンプルなこの音楽はロックやジャズ、ポピュラーミュージックのルーツといわれている音楽で、僕がエリック・クラプトンというミュージシャンを知ったきっかけとなったクリーム(クラプトンが60年代にやっていたバンド)の代表曲“クロス・ロード”も古いブルースのカバーです。
この“クロス・ロード”を作ったミュージシャンの名は、ロバート・ジョンソン。
ロックという音楽の礎を築いてきたミュージシャン達の多くが「影響を受けたミュージシャン」としてその名を挙げるミュージシャン。
驚異的なギター・テクニックと、そのテクニックを身に着けた伝説(リンクしたウィキペディアをご参照くださいませ…)、憂いを帯びた歌声。
音楽面だけじゃなく、その人生も波乱万丈で、ロック・ミュージシャン達を虜にする要素をすべてもっているような存在。
若き日のクラプトンは彼の音楽に心底惚れこみ、レコードが擦り切れるほど聴き、必死にコピーしたことが、彼のギタープレイの基盤になっているのだとか。
で…。
そんな情報に触れたミーハーなワタクシは「あのクラプトンに影響を与えたんだから、すごい人に違いないッ!そりゃ絶対聞かねばなるまいッ!」ってな使命感で(^^;)、あちこちのCD屋さんを物色し、見つけたのがこの作品。
『ROBERT JOHNSON THE COMPLETE RECORDINGS 』。
27歳という若さで逝去(その死因の謎もまた、彼が伝説となった要素かもしれません)した彼がその短い生涯でこの世に遺した作品29曲と、そのアウトテイクというこの世に残っている彼の全ての音楽を集めたものです(リリース時点)。
あのクラプトンが心底惚れたミュージシャンの作品。ドキドキ・ワクワクしながらCDをデッキに入れて再生ボタンを押したのですが…。当時エレクトリック・サウンドばかりを聴いていた僕にとっては、ザラっとしたアコギの弾き語りブルースというのが別の意味で衝撃的で(^^;)、「ナンだ?この古臭い音はッ!」てのが、正直な最初の感想でした。
ただ、僕は英語が今も昔も苦手なのですが(自慢にならん!)、それにもかかわらず、彼の憂鬱さ(ブルー)を訴える“歌”には非常心を揺さぶられるものがあって、「あぁ、これがブルースなんだ…」なんてことを漠然と思いました。
ギター・プレイの方に耳が行くようになり、その凄さがわかったのはもう少し後のこと。
ブログの主題(ようやくつながった!)である“スライド奏法”という観点から見ると、実はすべての楽曲で“スライド奏法”を取り入れているわけではなく、表現のいち手段としてスライド奏法を取り入れているという印象。したがって、個別に聴く”フレーズそのものは、比較的シンプルなのですが…。
特筆すべきは通常の演奏(歌のバッキングをするコード・プレイ)と“スライド奏法”によるオブリガートとの行き来の流麗さ!あまりに自然に行き来するので、最初はてっきりオーバーダビングしているか、あるいはもう1人プレイヤーがいるのか…なんて思っていたのですが、ライナーなどを読むとすべてリアルタイムで一人で弾いてるというじゃありませんか…。
そんな情報を得て改めて聞いて、絶妙なタイミングで奏法を切り替えていることに気が付いたときはホント“ノックアウト”されました。“スライド奏法”ってこんなこともできるんだ…なんて。
彼のカリスマ性を高めているエピソードの1つに、悪魔との取引で得たというその高度なギター・テクニックを盗まれないように細心の注意をしていたことがあって(“飯の種”なので当然といえば当然なのですが…)、例えばレコーディング時にエンジニア側ではなく、壁側を向いて演奏した…なんて話(実は彼が“シャイ”な性格なので、見知らぬ人の視線を意識して過度に緊張しないよう、壁側を向いたのに、伝説的エピソードだけが一人歩きした…という説もあるそうです)とか、ライブ中にギター・プレイに注視するお客がいたら、そこから先の演奏をすっぽかして出て行った…なんて話があるそうですが、これだけ格好よく超絶的なギター・プレイをリアルタイムで見聴きした側は、そりゃ真似の1つや2つもしたくもなるよね…。
若き日のエリック・クラプトンは、彼の演奏をレコードで聴いて(ロバート・ジョンソンはクラプトンが生まれるずっと前に亡くなっています)とにかく衝撃を受けたそうで、それこそレコードが擦り切れるまで何度も何度も聴きまくって、その演奏を必死にコピーしたのだそうです。ちなみに僕自身は、あまりに凄すぎるのでコピーしようという気すら起きませんでしたが…(^^;)。
さておき。
ブルースというジャンルへの興味が薄くなってからは、収納スペースの関係もあってブルース系のCDはかなりの枚数手放したのですが、このアルバムだけは手放す気になれなくて今でもずっと手元に残っています。
で、実際に聴くと「…古臭い音だよなぁ…」とか相変わらず思いますし(^^;)、ウン十年目にして「よし!コピーに挑戦しよう!」なんて気も起こらないのですが(^^;;)、彼の演奏や歌声に心を揺さぶられる感覚は、今も昔も変わっていません。
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ロバート・ジョンソンを心底愛したクラプトンが、満を持して発表したこれらのカバー集も、ロバート・ジョンソンに対する愛情や敬意を感じる素晴らしい作品。
- Me and Mr. Johnson/Reprise / Wea
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