直木賞作家・朱川湊人さんによる、ウルトラマンメビウスのパラレル・ワールド・ストーリー「ウルトラマンメビウス・アンデレスホリゾント」を読みました。
この小説のことは発売された頃から知っており、当時近所の書店をあたったのですが見つけることができず、そのままなんとなく入手する機会を逸してしまっていた1冊。最近、ちょっとした空き時間に立ち寄った書店でこの文庫版を見つけ、「この機会を逃してなるものか!」と即購入しました。
朱川さんはTV番組『ウルトラマンメビウス 』で脚本を3本担当しているのですが、文庫版のあとがきによると、小説家である彼が脚本を書くに至った理由は、日頃から自身がウルトラの大ファンであることを公言しており、これが制作サイドの知るところとなったこと-なのだとか(言ってみるもんですね…^^;)。
作品は本編で朱川さんが脚本を書いた「ひとりの楽園」「無敵のママ」「怪獣使いの遺産」の3作品の再構成した物語を中心に創作されており、主人公はTV本編には登場しないオリジナル・キャラクター“ハルザキ カナタ”という見習い隊員。
パラレル・ワールドではあるものの、ベースとなる設定や彼を囲むメンバー達は本編の設定をしっかりと継承しているし、この物語だけに登場するマシンや怪獣達も、本編の世界観を裏付にして創出されているので、記憶にあるイメージとの親和もバッチリ!何より大ファンを公言し脚本を担当されただけあって、『ウルトラマンメビウス』の…いや、ウルトラ作品全体に対する愛情とリスペクトに溢れていて、メビウスのいちファンとして、安心して読むことができました。
物語を更に面白くしているのが、随所に散りばめられたウルトラ・ネタたち。ストレートなものから少々マニアックなものまで様々なのですが、それらをサービス的に「入れてみた」という感じではなく、物語になくてはならない、あるいは、その世界観・設定をより深めるための素材として使用していて、そのセンスが非常に素晴らしかったです。個人的には、あるマシンの登場とその扱われようにはおおいに笑わせてもらいましたし、シビアなあの物語とその物語の中でも特に印象的な台詞の使い方にはグッとくるものがありました。
頭の中で自由に空想していく楽しみを存分に味わうことができる素晴らしいウルトラ作品でした。
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