*ニコラ君の新学期 ーステキなウサギちゃんー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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ステキなウサギちゃん

プチ・ニコラ

 今日、学校はすごく楽しかった!ほぼ丸一週間、ボクらはお利口にしていたので、女先生が粘土を持ってきてくれてクラスの一人一人に少しずつ分けてくれた。そして耳の大きな小っちゃなウサギの作り方を教えてくれたんだ。
 ボクが作ったウサギがクラスで一番よく出来ていた。先生がそう言ったんだよ。アニャンはそれが気に入らなかった。奴が言うには、それはおかしい、自分のウサギはボクのと同じぐらい良く出来ている、ボクはアニャンのウサギを真似したんだってね。勿論、そんなことはないさ。アニャンがそんなことを言うのは、自分がクラスの一番で先生のお気に入りなもんだから、自分じゃなくて他のだれかが先生から褒められるのが面白くないからさ。アニャンが泣いている間、女先生はクラスの他の連中に罰を与えたんだ。何故って連中ときたら、ウサギを作らずに粘土をぶつけあってケンカをしてたんだからね。

プチ・ニコラ

 アルセストは、ケンカはしてなかったけどウサギを作ろうともしなかった。粘土を一口食べてみて、その味が気に入らなかったのさ。それで先生はもう二度とボクらを喜ばせるようなことはしてあげませんて言ったんだ。本当に楽しい授業だったなあ。

 ボクは大満足で家に帰った。ウサギはカバンに入れてペチャンコになるといけないから片手に持って帰ったんだ。ボクは走ってキッチンに入って叫んだ。
 「見て見て、ママ!」
 ママはキャッと叫んでサッと後ろを振り返った。
 「ニコラ」ってママが言った。「何度言えば分かるの?騒々しくキッチンに入って来ないでちょうだい!」
 そこでボクはウサギをママに見せた。
 「さあ、手を洗ってらっしゃい」ってママが言った。「おやつが出来てるわよ。」
 「でも、ボクの作ったウサギを見てよ、ママ」ってボクは言った。「先生が言ったんだよ。クラスで一番素敵なウサギだって。」
 「まあ、まあ、すごいこと」ってママは言った。「さあ、おやつを食べる用意をしてきなさい。」
 でもボクにはよく分かったんだ。ママはボクのウサギなんか見ちゃいなかったってことがね。ママがこんな風に「まあ、まあ、すごいこと」って言うときは、本当は見ちゃいないってことなのさ。
 「見てないじゃないか、ボクのウサギを。」ってボクは言った。

プチ・ニコラ

 「ニコラ!」ってママが叫んだ。「おやつを食べる用意をしてちょうだいってさっき言ったはずよ!ママがこんなにイラついてるのは、あんたが言うことを聞いてくれなきゃ困るからよ!あんたが手に負えなくなるのは、ママには我慢がならないの!」
 それって、あんまりじゃないか!ボクがすごいウサギを作って、先生はクラスで一番良く出来たウサギだって言ってくれて、先生のお気に入りのあのアニャンでさえボクにやきもちをやいているんだ。それなのに家に帰れば叱られるんだもの!
 それって、ひどいじゃないか、そうだとも、全くの話 ! それでボクはキッチンにあったスツールを足で一発蹴り飛ばすと、走ってキッチンを出て自分の部屋に入り、ふくれっ面をした。それからベッドの上にダイブしたんだけど、その前に、押しつぶすといけないからウサちゃんは勉強机の上に置いといたのさ。
 それからママがボクの部屋に入って来た。
 「まだちっともケリがついていないようね、ニコラ、何なのあの態度は?」ってママが言った。
 「ママはボクの作ったウサギを見なかったじゃないか!」ってボクは言った。
 「はい、はい、はい!」ってママが言った。「見るわよ、ニコラのウサギを。とてもきれだわ、ボクのウサギは。ほら、これで気が済んだ?さあ、もうお利口にしてね。さもなきゃママは本当に怒るわよ。」
 「ボクのウサギが気に入らないの?」ってボクは言った。それからボクは泣き出したんだ。だってそうじゃないか。後で家に帰って、自分が作ったウサギを気に入ってもらえないなら、学校でちゃんと勉強したって意味ないじゃないか。

すると、下からパパの声が聞こえた。
 「みんなどこにいるんだ?」ってパパが叫んだ。「ただいま!今日は早く帰れたんだ!」
 それからパパはボクの部屋に入って来た。
 「一体全体」ってパパが訊いた。「どうしたって言うんだ?叫び声が庭にまで聞こえて来るぞ!」
 「実はね」ってママが言った。「学校から帰ってから、ニコラが手に負えないの。そういうことなの!」
 「手に負えなくなんかないや。」ってボクは言った。
 「少し落ち着いたらどうだ。」ってパパが言った。
 「ブラボー!」ってママが言った。「ブラボー ! この子に味方するがいいわ。後でこの子が手が付けられなくなったとき、最初にびっくりするのはあなたですからね!」
 「私がこの子に味方してるだって?」ってパパが言った。「誰の味方もしてないさ、私は!珍しく早く帰ってくれば、家の中は大騒動だ。辛い一日を終えてこんなに早く帰れるのを喜んでいたのに、全く結構な話だ!」
 「じゃ、私は?」ってママが訊いた。「私の過ごす日々が辛くないとでも思ってるの?あなたは外に出て、いろんな人に会ってるわ。私ときたら、奴隷のように家にいて、この家を何とか住みやすくしようって努めてるのよ。おまけに殿方たちの不機嫌までがまんしなけりゃならないってわけ。」
 「私が不機嫌だって?」そう叫ぶとパパはボクの勉強机をドンと叩いたんで、ボクは気が気じゃなかった。だってパパのパンチは危うくボクのウサちゃんに当たりそうになったんだ。もし本当に当たりでもしたら、ウサギはペチャンコになっていたよ。
 「ものの見事に不機嫌だわ。」ってママが言った。「それに、この子の前で大声で喚かないほうがいいと思うんだけど!」
 「この子を泣かしていたのは私じゃないと思うがね。」ってパパが言った。
 「そうよ、そうですとも。私がこの子を虐待してるってさっさとおっしゃったらどう?」ってママが言った。
 するとパパは顔の両側に拳を当ててボクの部屋をやたら大股で歩き出したんだ。でも部屋が小さいもんだから、パパはしょっちゅうUターンしなきゃならなかった。
 「ここに居ると頭がおかしくなっちまう!」ってパパは叫んでた。「おかしくなっちまうよ!」
 するとママはボクのベッドに腰掛けて、何度も深く息を吸い始めた。そして泣き出したんだ。ママが泣くのは好きじゃないから、ボクも一緒に泣いた。パパは歩き回るのを止めて、泣いてるボクらをじっと見つめ、それからママの隣に腰を下ろした。パパは片腕をママの両肩に回し、自分のハンカチを取り出してママに渡すと、ママは思い切り鼻をかんだ。
 「さあさあ、気を静めて」ってパパは言った。「こんな風にお互いいがみ合うなんて馬鹿げてる。私たちは三人とも気が立ってるんだ…ニコラ、鼻をかみなさい…気が立ってるものだから、有ること無いことつい口に出してしまうんだよ。」
 「その通りね」ってママが言った。「でもどうしようもないのよ、今日みたいに荒れ模様になってこの子が…」
 「分かった、分かった」ってパパが言った。「きっと万事上手く収まるさ。君も知っての通り、子供相手には少しばかり洞察力が必要なんだ。まあ、見ててごらん。」
 それからパパはボクの方に振り向いて片手でボクの髪を撫でた。
 「そうだよな?」ってパパは言った。「うちのニコラ君は、これからはママにすごく優しくして、ママに謝ってくれるよな?」
 ボクは「はい」って答えた。何故って、家で一番素敵な時は、ボクたち家族が言い争いを止める時だからさ。
 「私もあの子には少し辛く当たったわね」ってママが言った。「ねえあなた、学校ですごく頑張ったのよ、うちのニコラは。担任の女先生がクラスみんなの前であの子を褒めてくれたの。」
 「そりゃ上出来だ」ってパパが言った。「すごいじゃないか!ほらほら、二人とも泣く理由なんか何もないのさ。しかし、何だかんだで腹が減ったな。それにおやつの時間だよ。ニコラには後で成功談を聞かせてもらおう。」
 そしてパパもママも声を立てて笑った。それでボクもすっかりうれしくなっちゃって、パパがママにキスしている間にボクの素敵なウサギちゃんを取りに行ってパパに見せた。
 するとパパは振り向いて、ボクにこう言ったのさ。
「おいおい、ニコラ。万事丸く収まってるんだから、ニコラもお利口にしてくれるよな?それじゃあ、手に持ってるその小汚い代物をさっさと捨てて、両手をきれいに洗いなさい。それから心静かにおやつを食べようじゃないか。」


プチ・ニコラ


(ミスター・ビーン訳)

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