*歌曲集「美しき水車屋の娘」D795(Die schöne Müllerin D795)(2)* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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シューベルトには、「美しき水車屋の娘」、「冬の旅」、「白鳥の歌」という3つの歌曲集がありますが、「白鳥の歌」はシューベルトの死後、出版屋のハスリンガーがまとめたものですから、純粋な連作歌曲集は前2者ということになります。

「冬の旅」が主に現実社会からの「疎外」をテーマに、荒涼とした殆ど狂人とも言えるような主人公の心象風景を描いているのに対して「水車屋」の方は、一人前の水車屋を目指し、修行の旅に出る初々しい若者を主人公にして、シューベルトの本質の一つとも言える素朴で牧歌的な世界が描かれます。そして、最後は若者の死によって言わば青春の終焉を象徴する歌曲集です。

今日はその第2曲

「どこへ(Wohin?)」



若者は修行をするための水車屋を見つけるため、日頃親しんでいる小川に沿い、小川に問いかけながら旅を続けていきます。この曲はかなり有名で、単独でもよく歌われているようです。


シューベルト



Wohin? どこへ?
Ich hört' Bächlein rauschen
Wohl aus dem Felsenquel,
Hinab zum Tale rauschen
So frisch und wunderhell.


僕は岩間の泉から湧き出ている
小川のせせらぎを聞いた。
谷へ向かって、爽やかに澄んで
サラサラと流れていた。


Ich weiß nicht, wie mir wurde,
Nicht, wer den Rat mir gab,
Ich mußte auch hinunter
Mit meinem Wanderstab.


どうするべきかなんてわからない、
誰かに勧められたわけでもないが、
旅杖をつきながら
僕も下って行かなきゃいけない。


Hinunter und immer weiter,
Und immer dem Bache nach,
Und immer heller rauschte
Und immer heller der Bach.


谷を下ってどこまでも
小川の後を追っていくにつれ
せせらぎの音はさえ
小川はますます明るく澄んでいく。


Ist das denn meine Straße?
O Bachlein, sprich, wohin?
Du hast mit deinem Rauschen
Mir ganz berauscht den Sinn.


これが僕の進むべき道なのか?
おお小川よ、言ってくれ、どこへ行く?
おまえはそのせせらぎの音で
僕の心を魅了したんだ。


Was sag ich denn vom Rauschen?
Das kann kein Rauschen sein.
Es singen wohl die Nixen
Tief unten ihren Reihn.


いったいこのせせらぎの音は何なのだろう?
あれはただのせせらぎの音であるはずがない。
川底で輪になって
妖精が歌っているんだ。


Laß singen, Gesell, laß rauschen,
Und wandre fröhlich nach,
Es gehn ja Mühlenräder
In jedem klaren Bach.


若者よ、歌のまま、せせらぎのままに
陽気にさすらって行きなさい。
水のきれいな小川ならどこにでも
きっと水車が廻っています。


フィッシャー・ディスカウ(2分35秒から4分53秒)


ヘルマン・プライ(3分00秒から5分25秒)


イアン・ボストリッジ(2分30秒から4分46秒)


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