*歌曲集「美しき水車屋の娘」D795(Die schöne Müllerin D795)(1)* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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歌曲集「美しき水車屋の娘」D795(Die schöne Müllerin D795)」は、1823年5月~11月の間に作曲されました。

1823年5月のある日、シューベルトは友人のラントハルティンガーを訪問しましたが生憎留守。友の書斎の机の上に、たまたま一冊の詩集が置いてありました。ヴィルヘルム・ミュラー(Wilhelm Müller)の「旅のワルト・ホルン吹きの遺稿からの詩集」です。シューベルトはその内容にいたく共感し、友に無断で家に持ち帰りましたが、翌日ラントハルティンガーがシューベルトを訪ねると、詩集のうちの3篇が既に作曲済みになっていました。その後、慢性病(梅毒)による入院などもあり、歌曲集の完成は11月ごろと推定されています。

シューベルト

ヨーロッパでは中世の頃から職人組合(ギルド)があり、職人を志す若者は先ず奉公に出ます。何年か奉公して主人の許可があれば、同業者の職場を遍歴して腕を磨き、試験を受けて独立した職人になります。この歌曲集の筋書きは、そうした若者の遍歴の旅立ちから始まります。

今日はその第1曲

「さすらい Das Wandern」

リズムも旋律も、典型的に民謡風な5節の有節歌曲。ピアノの伴奏は水車を回す小川の流れを表すとともに、遍歴に旅立つ若者の弾む心と軽やかな足取りを表しています。



Das Wandern さすらい
Das Wandern ist des Müllers Lust, das Wandern!
Das muß ein schlechter Müller sein,
Dem niemals fiel das Wandern ein, das Wandern.


さすらいは水車職人の喜びだ、さすらいは!
腕の悪い水車職人にちがいない
さすらいを思わない者は。さすらいだ。


Vom Wasser haben wir's gelernt, vom Wasser!
Das hat nicht Rast bei Tag und Nacht,
Ist stets auf Wanderschaft bedacht, das Wasser.


川の流れに教えてもらった、川の流れに!
昼も夜も休みなく
いつもさすらいのことを考える、川の流れは。


Das sehn wir auch den Rädern ab, den Rädern!
Die gar nicht gerne stille stehn,
Die sich mein Tag nicht mude gehn, die Räder.


水車にも見習おう、水車にも!
じっと休むのを嫌い
一生飽きずに回り続ける、水車は!


Die Steine selbst so schwer sie sind, die Steine!
Sie tanzen mit den muntern Reihn
Und wollen gar noch schneller sein, die Steine.


あれほど重い石臼さえそうだ、石臼さえ!
元気に列を作って踊っては
もっと速くなろうとする、石臼は!


O Wandern, Wandern, meine Lust, o Wandern!
Herr Meister und Frau Meisterin,
Laßt mich in Frieden weiterziehn und wandern.


おお、さすらい、さすらい、僕の喜び、おおさすらい!
親方さん、おかみさん
僕を快く旅立たせてください、さすらわせてください!




ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ


ヘルマン・プライ


ルドルフ・ショック


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