*岩の上の羊飼いD965 (Der Hirt auf dem Felsen D965)* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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≪3つの軍隊行進曲 D733≫
シューベルトはその生涯で35曲ほどの4手用ピアノ曲を書いています。
ピアノ連弾曲はソロの曲に比べるとアマチュア的要素が多い分野ですが、この種の曲をかなり多く作曲しているのは、シューベルティアーデでの友情を何よりも大切にしていたシューベルトらしい姿勢と言えるのではないでしょうか。

今日は、そのうちの1曲「3つの軍隊行進曲」から最も有名な第1番を聴いてみます。

Lang Lang & Lucas Jussen





シューベルト

今日の歌曲は1828年10月、なんと死の1ヶ月前に作曲された

「Der Hirt auf dem Felsen D965 岩の上の羊飼い」

おそらくこの曲か、歌曲集「白鳥の歌」の最後の曲「鳩の使い」がシューベルト最後のリートとなるようです。

歌詞は歌曲集「美しき水車屋の娘」、「冬の旅」の作者ヴィルヘルム・
ミュラー
の詩の一部と先日音楽劇「ロザムンデ」の台本作家として紹介したヴィルヘルミーネ・フォン・シェジーの詩の一部を使用しています。

シェジーはフランスの言語学者を夫に持つ女流作家で当時多くの文人と交流がありました。ウェーバーの歌劇「オイリュアンテ」、シューベルトの音楽劇「ロザムンデ」の台本も書きましたがいずれも稚拙で平凡な作品だったようです。

この歌曲はシューベルトの歌曲としては特殊なもので、伴奏はピアノの他にクラリネットが加わります。
コロラトゥーラ・ソプラノの高度な声の技巧を要求される曲で、リートの味わいに加えて華やかな演奏効果を狙った曲でもあります。

最後の節は、それまでの暗い気分を振り切って、春が訪れた喜びを歌っています。




Der Hirt auf dem Felsen  岩の上の羊飼い
Wenn auf dem höchsten Fels ich steh’,
In’s tiefe Tal hernieder seh’,
Und singe.


僕は一番高い岩の上に立ち、
深い谷を見下ろして、
そして歌う。


Fern aus dem tiefen dunkeln Tal
Schwingt sich empor der Widerhall
Der Klüfte.


はるか深い暗い谷から
こだまが空高く駆け上る
渓谷を。


Je weiter meine Stimme dringt,
Je heller sie mir wieder klingt
Von unten.


僕の声が遠くに届くほど、
こだまははっきりと僕のところへ響き返す
下の方から。


Mein Liebchen wohnt so weit von mir,
Drum sehn’ ich mich so heiß nach ihr
Hinüber.


僕の恋人ははるか遠くに住んでいる、
だから僕はとても熱く彼女を恋しがっている
向こうの方に。


In tiefem Gram verzehr ich mich,
Mir ist die Freude hin,
Auf Erden mir die Hoffnung wich,
Ich hier so einsam bin.


深い悲しみに僕はやつれ、
喜びは去ってしまった、
地上での希望は消え去り、
僕はここで一人ぼっち。


So sehnend klang im Wald das Lied,
So sehnend klang es durch die Nacht,
Die Herzen es zum Himmel zieht
Mit wunderbarer Macht.


そうやって 森の中で歌は切々と響き、
そうやって 夜の中を切々と響いてゆく、
人々の心を歌は天へと向ける
驚くべき力で。


Der Frühling will kommen,
Der Frühling, meine Freud’,
Nun mach’ ich mich fertig
Zum Wandern bereit.


春が来ようとしている、
春よ、僕の喜びよ、
いまこそ僕は
旅の支度を終わらせる。



バーバラ・ボニー


キャスリーン・バトル(Sop.)


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