*ガニュメート D544(Ganymed D544)* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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≪自立⑤≫
1821年、ようやくシューベルトのリートの出版が実現しますが、これは自費出版だったようです。
作曲者がまだ無名であり、ピアノ伴奏が難しいという理由でどの出版社も出版を拒否したようです。

そこでゾンライトナーヒュッテンブレンナーらの音楽愛好家が費用を出し合い、まず「魔王」を自費出版しました。幸いこれは好評で3ヶ月あまりで300部を売りつくし、次に「糸を紡ぐグレートヒェン」と続き、その年のうちに作品7までの20曲のリートと作品9のピアノ独奏曲ワルツ36曲が自費出版され、本格的出版活動が始まることになります。

ここまでは、ゾンライトナー、ヒュッテンブレンナーがカッピ&ディアベリ社にかけあい出版社の費用で出版するという形ではなく、あくまで自費出版という形で出版を引き受けさせたのでした。その資金は大部分をゾンライトナーが負担したようです。

まあそれでも、とにかく楽譜を印刷し流通に乗せたことでシューベルトはプロの作曲家としての道を歩み始めることになります。

$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-シューベルト肖像(1)




今日は1817年、シューベルト20歳のときの作品

「ガニュメート D544(Ganymed D544)」

です。

詩はゲーテのものですが、美しい少年ガニュメートがゼウスに連れられてオリンポスの山に向かうときに歌ったというギリシャ神話を題材にしたものです。
かなり優美な趣と神話らしい荘重さを兼ね備えた曲ですね。




Ganymed  ガニュメート
Wie im Morgenglanze
Du rings mich anglühst,
Frühling, Geliebter!
Mit tausendfacher Liebeswonne
Sich an mein Herz drängt
Deiner ewigen Wärme
Heilig Gefühl,
Unendliche Schöne!


朝陽の輝きの中で、  
おまえがわたしの周りに燃え立つさま!  
春よ、愛するものよ!  
愛の歓喜が無限にひろがり、  
おまえの無限のあたたかさが   
聖なる感情となって  
わたしの胸に迫ってくる、  
尽きることのない春の美しさよ!


Daß ich dich fassen möcht'
In diesen Arm!


おまえをぐっと抱きしめたい、  
この腕の中に!


Ach, an deinem Busen
Lieg' ich und schmachte,
Und deine Blumen, dein Gras
Drängen sich an mein Herz.
Du kühlst den brennenden
Durst meines Busens,
Lieblicher Morgenwind!
Ruft drein die Nachtigall
Liebend nach mir aus dem Nebeltal.


ああ、春よわたしはおまえの胸に   
身を委ね、心を焦がす。   
そしておまえの花、おまえの若草を   
わたしの胸に押しつける。  
おまえはわたしの胸の   
燃えるような渇きを癒してくれる。   
爽やかに吹いてくる朝のそよ風に乗せて、   
連れ合いを求める鶯の鳴き声が   
霧深い谷間から響いてくる。


Ich komm', ich komme!
Wohin? Ach, wohin?


わたしは行く、いま行くのだ!  
どこへ? ああ、だがどこへ?


Hinauf! Hinauf strebt's.
Es schweben die Wolken
Abwärts, die Wolken
Neigen sich der sehnenden Liebe.
Mir! Mir!
In eurem Schosse
Aufwärts!
Umfangend umfangen!


上へ行くのだ! 力の限り 上方へ。  
上空に漂う雲は、  
下方へ向かいつつ、   
胸を焦がし、愛するものに身を傾ける。   
わたしに! このわたしに!   
おまえたちの雲の膝に抱かれて  
また 上方に向かう!   
雲を抱きしめ、雲に抱かれつつ!


Aufwärts an deinen Busen,
Alliebender Vater!


上へ、あなたの懐の中へ、  
すべてのものを愛する父よ!


(喜多尾道冬氏の訳)      

       

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