*僕の挨拶を D741(Sei mir gegrüßt D741)* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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≪シューベルトの音楽教育③≫
1812年7月、シューベルトは声変わりをしたので宮廷礼拝堂聖歌隊の仕事を続けられなくなりますが、その音楽的才能故にコンヴィクトに留まることを許されます。
その後、1813年9月に数学で落第点を取ったときも、特別の配慮で進級し奨学金の授与も認められました。
しかしシューベルトは奨学金の授与は辞退し、1813年11月23日にコンヴィクトを退学します。

さて、シューベルトはコンヴィクトの寮生活で豊かな音楽経験を積むことになります。
寮には寮生だけで構成されたフル・オーケストラがあり、シューベルトも入寮とともに第二ヴァイオリンとして参加し、1811年からは副指揮者を務めるようになります。
彼の交響曲第一番ニ長調D82は、私的ではありますが、この寮オーケストラにより初演が行われました。

schubert



今日の1曲は1821年末から1822年秋までの間に、リュッケルトの詩に作曲された

「僕の挨拶を D741(Sei mir gegrüßt D741)」

です。

通作形式のワルツ風に書かれたセレナード風の曲。
とても甘美な曲で、その甘美さ故に多くの人々に愛されている曲でもあります。




Sei mir gegrüßt 僕の挨拶を
O du Entrißne mir und meinem Kusse,
Sei mir gegrüßt, sei mir geküßt!
Erreichbar nur meinem Sehnsuchtgruße,
Sei mir gegrüßt, sei mir geküßt!


ああ、僕と僕の口づけから引き離されてしまった人よ、
僕の挨拶を、僕の口づけを受け取ってくれ!
この憧れの挨拶だけは届きますように、
僕の挨拶を、僕の口づけを受け取ってくれ!


Du von der Hand der Liebe diesem Herzen Gegebne,
Du von dieser Brust Genommne mir!
Mit diesem Tränengusse
Sei mir gegrüßt, sei mir geküßt!


愛の手によってこの心に与えられた人よ、
僕のこの心から奪い去られてしまった人よ!
この流れる涙と共に
僕の挨拶を、僕の口づけを受け取ってくれ!


Zum Trotz der Ferne, die sich feindlich trennend
Hat zwischen mich und dich gestellt;
Dem Neid der Schicksalmächte zum Verdrusse
Sei mir gegrüßt, sei mir geküßt!


僕と君の間に立ち塞がり、意地悪くへだてている
この遠さにあらがい、
運命の妬みの力に腹を立てて
僕の挨拶を、僕の口づけを受け取ってくれ!


Wie du mir je im schönsten Lenz der Liebe
Mit Gruß und Kuß entgegenkamst,
Mit meiner Seele glühendstem Ergusse,
Sei mir gegrüßt, sei mir geküßt!


君がかつて美しい愛の春に
挨拶と口づけで僕を出迎えてくれたように、
僕の魂の熱いたぎりと共に
僕の挨拶を、僕の口づけを受け取ってくれ!


Ein Hauch der Liebe tilget Raum und Zeiten,
Ich bin bei dir, du bist bei mir,
Ich halte dich in dieses Arms Umschlusse,
Sei mir gegrüßt, sei mir geküßt!


愛の息吹は空間と時間を超え、
僕は君の側に、君は僕の側にいる。
僕は君をこの腕に抱きしめる、
僕の挨拶を、僕の口づけを受け取ってくれ!


フィッシャー=ディースカウ(ピアノ:ジェラルド・ムーア)


イアン・ボストリッジ(ピアノ:ジュリアス・ドレイク)


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