*水の上で歌う D774 (Auf dem Wasser zu singen D774)* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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《シューベルトの音楽教育②》
11歳になったシューベルトは、1808年10月、2名の欠員があった宮廷礼拝堂聖歌隊の入学試験を受け合格します。

聖歌隊に入るとコンヴィクト(帝室王室寄宿制学校)の給費生になれるのです。
そこでは、ギムナジウム(中高等学校)の普通教育と音楽専門教育が同時に受けられる仕組みになっています。

以後、5年間のコンヴィクト寄宿寮の生活が始まるわけですが、ギムナジウムの基礎教育は、読み書き、道徳、宗教、地理、歴史、数学、自然科学、さらにラテン語、ギリシャ語という多岐に渡るものでした。

音楽専門教育では、歌唱、ピアノ、ヴァイオリンを学び非常に優秀であったので、1811年には「シューベルトの音楽教育に対して特別の配慮をすべきである」という指示がでたほどでした。

その結果、彼は宮廷オルガニストのルジッカから通奏低音、ピアノ、ヴィオラ、チェロの特別授業を受けることになります。
更に、宮廷楽長サリエリから作曲のレッスンを受けるため、特別に外出を許されることになりました。

シューベルト





今日は、歌曲集「美しき水車屋の娘」と同年つまり1823年作の

「水の上で歌う D774 (Auf dem Wasser zu singen D774)」

です。

歌詞はシュトルベルク伯爵、ゲーテとも交流があり前半生は自由主義的理想主義者、後半生は古典主義者として過ごした貴族です。

夕暮れの舟遊びを歌った歌で、32分音符のピアノ伴奏が水のせせらぎを表し、それに美しい旋律が流れるように乗っていきます。



Auf dem Wasser zu singen D774 水の上で歌う
Friedrich Leopold Graf zu Stolberg フリートリッヒ・シュトルベルク

Mitten im Schimmer der spiegelnden Wellen
Gleitet wie Schwäne der wankende Kahn;
Ach, auf der Freude sanftschimmerenden Wellen
Gleitet die Seele dahin wie die Kahn;
Denn von dem Himmel herab auf die Wellen
Tanzet das Abendrot rund um den Kahn.


きらめく波のかすかな光の中を
白鳥のように揺れる小舟がすべって行く。
ああ、優しくきらめく波の喜びにのって
この魂も小舟のようにすべって行く。
夕映えが大空から波の上に降りそそぎ
小舟のまわりを踊っているために。


Über den Wipfeln des westlichen Haines
Winket uns freundlich der rötliche Schein;
Unter den Zweigen des östlichen Haines
Säuselt der Kalums im rötlichen Schein;
Freunde des Himmels und Ruhe des Haines
Atmet die Seel' im errötenden Schein.


西の森の梢の上では
赤い輝きが親しげにわたしたちに目配せしている。
東の森の枝の下では
菖蒲が赤い輝きの中でそよいでいる。
大空の喜びと森の安らぎを
魂は吸い込むのだ、赤く燃える輝きの中で。


Ach, es entschwindet mit tauigem Flügel
Mir auf den wiegenden Wellen die Zeit.
Morgen entschwinde mit schimmerndem Flügel
Wieder wie gestern und heute die Zeit,
Bis ich auf höherem strahlenden Flügel
Selber entschwinde der wechselnden Zeit.


ああ、時が揺らめく波にのり
露にぬれた翼でわたしの前から消え去って行く。
明日もまた、かすかな光の翼で
時は昨日や今日と同じように消え去っていくのだ、
わたし自身がより高く輝く翼にのって
うつろう時の中から消え去っていくまで。



フィッシャー=ディスカウ(ピアノ:ジェラルド・ムーア)


イアン・ボストリッジ(ピアノ:ジュリアス・ドレイク)


バーバラ・ボニー(ピアノ:ジョフリー・パーソンズ)


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