*シューマンの歌曲 (27)- 詩人の恋「僕は恨まない Ich grolle nicht」ー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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≪デュッセルドルフ時代①≫
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シューマン一家は1850年9月1日ドレスデンを発ち、9月2日夜デュッセ
ルドルフに到着します。

現在デュッセルドルフはドイツ西部ライン川沿いの大商業都市に発展
していますが、1850年頃は人口4万5千人の庭園風の地方都市でした。
音楽の面でもライプツィッヒやドレスデンに並ぶ音楽都市でもあったので
す。

シューマンは市の音楽監督に就任したのですが、その職務は①合唱団
の指導、②10月~5月までの音楽シーズンにオーケストラの定期演奏会
を10回指揮すること、③主要な教会祝日に聖マクシミリアン教会と聖
ランベルトゥス教会で教会演奏会を4回指揮することの3つでした。
シューマンはクララの協力のもとに、これらの演奏会を通して自作の
普及に努め、1850年~1854年2月までにシューマンの全作品のおよそ三
分の一が音楽監督の職務を通して生まれることになります。

そして10月24日、「第1回演奏会」が行われ、シューマンは大成功を収
めます。
11月1日には、その2週間前からとりかかっていたチェロ協奏曲イ短調
Op.129が完成します。この曲はロマン派のチェロ協奏曲を代表する傑作
です。
また11月2日から着手した交響曲第三番「ライン」が12月9日に完成しま
す。

今日は、ミッシャ・マイスキーのチェロ、バーンスタイン指揮ウィーンフィル
の演奏で

「チェロ協奏曲イ短調 Op.129」

を聴いてみましょう。


第1楽章

第2楽章、第3楽章


≪今日の1曲≫

さて、歌曲の方は歌曲集「詩人の恋」の第7曲

「 Ich grolle nicht 僕は恨まない」

前半最後の曲となりますが、「僕は恨まない」という言葉とは裏腹に
恋人を失った心の痛みと激情が、俗に言えば「バリバリ恨んでるじゃ
ないか!」という心情を声とピアノで痛烈に表現している名作。

この曲は遠い昔、高校の音楽の授業の課題曲にされて苦労した思い出
があります。ボストリッジがビデオの中で語っていますが、この曲の
クライマックスの部分に一点Aの音があるのですが、そこは一点Dも
選択できるのでボクは勿論D音に逃げました(笑)

今日はいつも通り、DFD版とボストリッジ版をアップしますが、も
う一本、この曲の練習風景(?)を背景にボストリッジが語っている
映像がありましたのでそちらもアップしておきます。


7. Ich grolle nicht 僕は恨まない
Ich grolle nicht, und wenn das Herz auch bricht,
僕は恨まない、たとえ心が張り裂けようとも、
Ewig verlor’nes Lieb ! Ich grolle nicht.
永遠に僕のものでなくなった恋人よ!僕は恨まない。
Wie du auch strahlst in Diamantenpracht,
たとえ君がダイアの様に光り輝いていても、
Es fällt kein Strahl in deines Herzens Nacht.
君の心の夜には一筋の光も射してはいないんだ。

Das weiß ich längst. Ich sah dich ja im Traume,
ずっとわかっていた。僕は本当の君を夢で見たんだ、
Und sah die Nacht in deines Herzens Raume,
君の心の中にある夜の闇を見て、
Und sah die Schlang’, die dir am Herzen frißt,
君の心を喰らう蛇を見た、
Ich sah, mein Lieb, wie sehr du elend bist.
僕は見たんだ、恋人よ、どんなに君が悲惨な姿をしているか。


フィッシャー=ディースカウ


ボストリッジ 3分20秒から

ボストリッジ 語りと練習風景