*シューマンの歌曲 (16) - リーダークライスOp.39-6 美しい異郷 ー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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≪ライプツィッヒ時代①≫

1840年9月12日、シューマンは念願のクララとの結婚式をあげ、新居
をライプツィッヒ、インゼル通りに構えました。
以後、1844年まで彼の音楽活動はライプツィッヒを中心に展開するこ
とになります。

1840年が、大量の歌曲が作曲された「歌の年」であったのに対して、
翌1841年は年明けから管弦楽作品を作曲する意欲が顕著に表れてきま
す。
1838年に、シューベルトの兄フェルディナンドの家で「大ハ長調交響
曲」の楽譜を発見したことも管弦楽への意欲を掻き立てた一因であっ
たようです。

そして、1月23日、シューマンはアドルフ・ベットガ-の詩の最終行
「谷間には春が燃え立っている」という詩句に霊感を受けて、26日ま
でのわずか4日間で


「交響曲変ロ長調≪春の交響曲≫」

のスケッチを書き上げてしまいます。
それは、二段譜に旋律とバスを記したスケッチでした。

さらに、1月27日から2月20日までの期間でオーケストレーションを完
成。
当初は各楽章に「春の訪れ」「たそがれ」「朗らかな戯れ」「春らん
まん」という標題が付いていましたが、最終的には標題は取り除かれ
て出版されることになりました。

初演は、3月31日、メンデルスゾーン指揮によるゲヴァントハウス・
オーケストラの演奏でなされました。
この演奏会には、クララも出演しショパンのピアノ協奏曲ヘ短調の第二
楽章と第三楽章を演奏しています。

シューマンはこの初演をたたき台にして、第一楽章、第三楽章、第四
楽章を順次改訂していきますが、初演の後での改訂作業はこれ以後の
作品においてもシューマンの重要な創作プロセスとなります。

今日は、レナード・バーンスタイン指揮、ウィーン・フィルハーモニー
の演奏で、その第一楽章を聴いてみましょう。


交響曲第1番変ロ長調≪春≫ 第一楽章




≪今日の一曲≫

今日は歌曲集リーダークライスOp.39の第6曲で前半の大きな山場
となる曲


「Schöne Fremde 美しき異郷」

美しくざわめく和音伴奏に乗せて、幻想的な夜の囁きと幸福の予感
が静かに歌われます。

歌唱は、フィッシャー=ディスカウ(ハイ・バリトン)、ブリン・
ターフェル
(バス・バリトン)、エリー・アメリンク(ソプラノ)
で聴いてみます。


6. Schöne Fremde 美しき異郷
Es rauschen die Wipfel und schauern,
ざわざわと梢が音を立て、身をふるわせる、
Als machten zu dieser Stund
ちょうどこの時、
Um die halbversunken Mauern
半ば埋もれた城壁のまわりを
Die Alten Götter die Rund.
古き神々がめぐっているかのようだ。

Hier hinter den Myrtenbäumen
ここ、ミルテの木の下、
In heimlich dämmernder Pracht,
ひっそりとたそがれていく美しい色彩の中で、
Was sprichst du wirr wie in Träumen
まるで夢の中のようにとりとめもなく、何を、僕に
Zu mir, phantastische Nacht?
ささやいているんだい?夢のような夜よ。

Es funkeln auf mich alle Sterne
僕の頭上ではすべての星々が輝いている、
Mit glühendem Liebesblick,
燃えるような愛の眼差しで。
Es redet trunken die Ferne
その遠さが、まるで酔ったように語るんだ、
Wie von künftigem, großem Glück.
やがて来る、大きな幸せのことを。


フィッシャー=ディスカウ(Bar.)(ピアノ:ヴァイセンボーン)


ブリン・ターフェル(Bar.)


エリー・アメリンク(Sop.)(ピアノ:イェルク・デームス)