*フィッシャー・ディスカウのシューベルト歌曲(5) -孤独-* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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好きな音楽の話題を中心に、気の向くままに書いていきます。

私は、仕事が終わるのが毎日10時過ぎになるのですが、この季節、
職場から20分ほど歩いて最寄りのJRの駅まで、寒くて暗い夜道を歩
いていると、何だか「冬の旅」の主人公になったような気分になり
ます(笑)

シューベルトがミュラーの詩「冬の旅」を知ったのは、1827年の
ことですが、それは第1部の12編のみでした。早速作曲にとりか
かり、1828年1月に出版したのですが、ミュラーの詩に続編がある
ことを知り、第2部12曲を死の1ヶ月前である10月に完成させました。
第2部の出版はシューベルトの死後1ヶ月たった12月のことです。

今日は「冬の旅」第1部の終曲


「孤独( Einsamkeit)」

を聴いてみます。

冬の荒野を放浪する若者は、とある町にたどり着きます。
その町の穏やかで楽しげな様子を見るにつけても自分がこの世界で
はよそ者であることを感じ、強い疎外感を味わいます。
およそ200年前に作られたこの歌曲集が現代人にも愛唱されている
理由の一つは、現代の我々にも通ずるこの疎外感を巧みに歌いあげ
ていることではないでしょうか?


Einsamkeit 孤独
Wie eine trübe Wolke
Durch heitre Lufte geht,
Wenn in der Tannne Wipfel
Ein mattes Lüftchen weht:


うす暗い雲が
明るい空を漂って行くように、
もみの木の梢を
気だるげな風が吹いていく時、


So zieh' ich meine Straße
Dahin mit trägem Fuß,
Durch helles, frohes Leben,
Einsam und ohne Gruß.


僕も自分の道を進んでいる。
緩慢な足取りで、
明るい、楽しげな暮らしの中を
孤独に、挨拶もすることなく。


Ach, daß die Luft so ruhig!
Ach, daß die Welt so Licht!
Als noch die Stürme tobten,
War ich so elend nicht.


ああ、大気がこんなにも穏やかだなんて!
ああ、世の中がこんなにも輝いているなんて!
まだ嵐が吹き荒れていた時には
僕はこんなにも惨めではなかったのに。