*フィッシャー・ディスカウのシューベルト歌曲(6) -音楽に寄せて-* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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今日は、シューベルトが20歳のとき、つまり1817年3月に作曲
した歌曲


「音楽に寄せて(An die Musik)」

を聴いてみます。

この曲も大変有名ですが、詩は友人のフランツ・リッター・
フォン・ショーバー
の作品です。

当時まだ音楽家としては無名のシューベルトは父が経営する
学校で意に沿わぬ教師生活を送っていたのですが、ショーバー
は彼に教師を辞めて芸術家の道に専念することを提案し、彼を
客人として自宅に迎えます。

そんなシューベルトの周りには、有名なバリトン歌手のフォ
ーゲル等、彼の音楽を熱愛し崇拝する友人たちが集まって
きます。いわゆる「シューベルティアーデ」と呼ばれるサロン
が形成されていきました。

教師も辞め、公演で稼ぐこともできない素寒貧のシューベルト
を影になり日向になり献身的に援助してきたのは彼らでした。
そんな時期に作曲されたのが、音楽への愛と感謝の念を素直に
歌い上げたこの曲です。


An die Musik 音楽に寄せて
Du holde Kunst, in wieviel grauen Stunden,
Wo mich des Lebens wilder Kreis umstrickt,
Hast du mein Herz zu warmer Lieb entzunden,
Hast mich in eine bessre Welt entrückt!


君 優しい芸術よ、どれだけ多くの悲しい時、
人生の激しさが僕を取り囲んだ時に、
おまえは僕の心に温かい愛を燃え立たせ、
僕をよりよい世界へと連れ去ってくれたことか!


Oft hat ein Seufzer, deiner Harf entflossen,
Ein süsser, heiliger Akkord von dir
Den Himmel bessrer Zeiten mir erschlossen,
Du holde Kunst, ich danke dir dafür!


しばしば、おまえの竪琴から流れ出たため息、
おまえからの甘い、清らかな和音が
よりよい時である天国を僕に解き明かしてくれた。
君 優しき芸術よ、それを僕はおまえに感謝しよう!