*フィッシャー・ディスカウのシューベルト歌曲 (1) -おやすみ-* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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好きな音楽の話題を中心に、気の向くままに書いていきます。

今日から大学のセンター試験が始まりますね。
毎年、冬のこの寒い時期に入学試験を受けなければならない
受験生は本当に気の毒だと思いますが、日頃の努力の成果を
余すところなく発揮して合格を勝ち取ってもらいたいものだ
と思っています。

さて、この時期にふさわしい音楽となると、やはりシューベ
ルトの歌曲集「冬の旅」
が頭に浮かびます。
以前、このブログでも取り上げましたが、今回は私が最も
敬愛するバリトン歌手、ディートリッヒ・フィッシャー=
ディスカウ(DFD)
の素晴らしい音源がyoutubeで見つかりまし
たので、再度アップしてみたいと思います。

DFDは、いくつも「冬の旅」を録音しておりますが、私の
考えではやはりジェラルド・ムーアのピアノで歌ったこの
ヴァージョンが最高だと思います。
30代後半から、40代前半の脂の乗り切った時期の見事な
歌唱です。

今日はその第1曲


「おやすみ」(Gute Nacht)

をお聴き下さい。

なお、後半部は歌曲集「美しい水車小屋の娘」の第8曲「朝の
挨拶」です。


1.おやすみ
Fremd bin ich eingezogen,   
Fremd zieh' ich wieder aus,   
Der Mai war mir gewogen      
Mit manchem Blumenstrauß.   
Das Mädchen sprach von Liebe,   
Die Mutter gar von Eh'.       
Nun ist die Welt so trübe,   
Der Weg gehüllt in Schnee.
  

僕はよそ者としてやって来て
またよそ者として去っていく。
五月はたくさんの花束で
僕をもてなしてくれたものだった。
あの子は愛していると言ってくれたし
母親は結婚話まで持ち出した。
今ではあたりはもの悲しく、
道は雪で覆われてしまっている。


Ich kann zu meiner Raisen   
Nicht wählen mit der Zeit,   
Muß selbst den Weg mir weisen   
In dieser Dunkelheit.       
Es zieht ein Mondenschatten   
Als mein Gafährte mit,       
Und auf den weißen Matten   
Such' ich des Wildes Tritt.
  

僕は旅立つのに
時を選ぶことはできない。
僕はこの暗闇の中、
自分で道を探さなければならないんだ。
月に照らされた自分の影が
僕の旅の道連れだ。
そしてこの一面真っ白の中で
僕は獣の行く道を探すんだ。


Was soll ich länger weilen,   
Daß man mich trieb' hinaus,   
Laß irre Hunde heulen       
Vor ihres Herren Haus.       
Die Liebe liebt das Wandern,   
Gott hat sie so gemacht,   
Von Einem zu dem Andern,   
Fein Liebchen, gute Nacht.
  

僕はこれ以上留まりはしない、
自分が追い出されようとしているんだから。
狂ったようにわめく犬には
その主の家の前で吠えさせておけ。
愛はさすらいを好むもの、
神様がそうお決めになったのだから。
ある人から、また別の人へと。
いとしい人よ、おやすみなさい。


Will dich im Traum nicht stören,  
War' schad' um deine Ruh',   
Sollst meinem Tritt nicht hören,  
Sacht, sacht die Türe zu.   
Schreib' im Vorübergehen   
An's Tor dir: Gute Nacht,   
Damit du mögest sehen,       
An dich hab' ich gedacht.
  

夢見ている君の邪魔をしないでおこう、
君の安らぎを壊したくはないから。
僕の足音が聞こえないように
そっと、そっと扉を閉めよう。
通り過ぎる時に君の戸口に
おやすみ、と書いておこう。
君がそれを見てわかるように、
僕が君の事を想っていたんだと。



8. Morgengruß 朝の挨拶
Guten Morgen, schöne Müllerin,
Wo steckst du gleich das Köpfchen hin,
Als wär dir was geschehen?
Verdrießt dich denn mein Gruß so schwer?
Verstört dich denn mein Blick so sehr?
So muß ich wieder gehen.


おはよう、美しい水車小屋のお嬢さん。
すぐさま、どこへ顔を向けてしまうの?
まるで何か起こったように。
僕の挨拶が君にはそんなに嫌なの?
僕の視線が君にはそんなにわずらわしいの?
それなら僕はまた旅立たなければならない。


O laß mich nur von ferne stehn,
Nach deinem lieben Fenster sehn,
Von ferne, ganz von ferne!
Du blondes Köpfchen komm hervor,
Hervor aus eurem runden Tor
Ihr blauen Morgensterne!


どうか僕が遠い所から
君のかわいい窓を覗くのを許しておくれ。
遠くから、本当に遠くからだから!
ブロンドの頭よ、そこから出ておいで、
真ん丸な瞳から出ておいで、
青い朝の星よ!


Ihr schlummertrunknen Äugelein,
Ihr taubetrübten Blümelein,
Was scheuet ihr die Sonne?
Hat es die Nacht so gut gemeint,
Daß ihr euch schließt und bückt und weint
Nach ihrer stillen Wonne?


ねぼけた、かわいい眼よ
露にぬれた小さい花よ
どうして陽の光を避けるの?
夜がとても気持ち良かったから
目を閉じて、かがみ込んで泣いているの?
夜のひそかな楽しみを懐かしんで。


Nun schüttelt ab der Traume Flor
Und hebt euch frisch und frei empor
In Gottes hellen Morgen!
Die Lerche wirbelt in der Luft,
Und aus dem tiefen Herzen ruft
Die Liebe Leid und Sorgen.


さあ、夢のベールを払い落として
爽やかに、のびのびと身を起こそう!
神様のおられる明るい朝に。
雲雀は空を舞い、
心の奥底からは
愛が苦悩と不安をうったえている。