「何々?」

「嘘でしょう?」

「看護師さん、お助けください」

「AEDを」

まだ何が起きたのか理解できないでうろたえる叫び声を、マイクが拾う。

皆、この日本で、国のトップだったリーダーが狙撃されるとは、目の前で大変なことが起きてしまったことはわかるが、現実と虚構の区別がつかない。現実に起きてしまったのか、それとも非現実なのか、これから何が起きるのか、テレビを見ている人間を含めて、理解不能になっていた。ただショックで唖然としているのみ。

 

一方、犯人はすぐに4,5人のSPに捕えられ、近くには黒い物体が転がっていた。これが手製の銃?形が全く銃らしくなく、これから毒ガスでも噴き出しそう。実際、自分で作った銃だった。こんなもので殺されるなんて。ひ弱な感じの男であった。無職だったとか。こんな男に翻弄されるなんて。どんな理由があろうとも、人を殺傷するのは許せない。

 

心肺停止状態の安倍さんは、撃たれた状態で人工呼吸をやってもらっていた。目を閉じた状態で、白いワイシャツの左側に血の跡が見えた。こんな映像を報道するの?

 

夕方、奥さんが病院に到着し、残念ながら蘇生は不可能である状態を確認し、死が確定した。狙撃されて5時間以上経過していた。朝、元気に選挙の応援に出た夫と、こんな状態で対面するとは、宰相夫人の覚悟は、結婚当初からできていただろうが、タクシーの中でうつむき加減の彼女、不意にやってきた現実に悲しみ、無念さが痛いように伝わってくる。

 

夕方犯人の住宅に家宅捜索に来ていた警察の重装備の姿に、驚愕した。また何か物騒なことが起こりそう。カナリアを連れたオーム事件の捜索が、頭の中を巡った。毒ガスでも作っていたのか。爆発物があるのか。銃もまだまだあるのか。あの犯人が単独で、そんなことできるのか。安倍さんのほかにも銃殺計画が発覚したのか。妄想であってほしい。まったく怖い世の中。