主翼形状-2

 

4 テーパー

翼が、胴体付け根(翼根という)から翼端に向けて細くなっていくのを、

テーパー翼という。

 

テーパーが強いと、力のかかる根元が大きいわけだから、強度的に楽になる。

 

根元が太いと強度が上がる、強くなる、という表現を目にするが、

残念ながらこれは間違いだ。

航空機は決められた強度にキッチリ合わせるのが、

設計の基本で、無駄な強度(重量)は許されない。

 

だから、強度は同じに設計した結果、軽くなった、というのが正しい。

もっともこれは実機の話し。

 

完成した1号機  胴体が折れ、修理した跡が見える

主翼はワンモーションのモノコック構造(1号機のみ)

 

5 翼端失速

ならば、根元を極力広くし、

翼端を幅のない三角形のような平面形にすればよいということになる。

 

しかしテーパーを強くしすぎると、翼端の気流が乱れやすく、

翼端失速などの危険にさらされる。

 

同じアスペクト・レシオでも、誘導抵抗が最小になる平面形として、

楕円翼がある。

しかし、これにも翼端失速の危険性がある。

 

6 翼端レイノルズ数

翼根の翼弦は45mm、翼端では10mm、空力平均翼弦は35mmだ。

 

レイノルズ数は、

翼根では~1.85×10^4、翼端で~4.1×10^3、空力平均翼弦で~1.43×10^4程度。

 

もしかすると、翼端のレイノルズ数が小さすぎ、

翼弦を大きくするほうがよいのかもしれない。

 

しかし、翼端が狭いということは、その分翼根は広いわけで、

面積の大きい翼根でRe数が大きく、抗力を下げているわけだから、

全体では損をしないといえる。

 

Re数による抗力の増減は、Re数比の逆数を1/3乗した値に比例する、

という点から言うと、

テーパー比が強いほど、抗力は減少することになる。

 

もっとも、こんな低レイノルズ数でも、1/3乗に乗っているのか? 

という点については、いささか怪しいかもしれない。

 

Re数を大きく取りたければ、アスペクト・レシオを小さくし、

翼弦を大きくすればできる。

しかし、誘導抵抗が大きくなるから、

これも総合的には性能低下となってしまう。

 

7 主翼平面形の決定

議論はこの程度にして、そろそろ全体の形状を決める。

 

図のような平面形にした。

 

展開形状では、翼端がやせすぎているように見えるが、

翼端上反角(ウイングレット)を立てた投影で見ると、良好に見える。

 

直線構成でありながら、おおむね楕円形状で、翼端が細すぎない、ほどほどの形になった。

 

主翼全体の迎え角を大きくしても、上反角部は迎え角的に逃げるから、

翼端失速は心配しなくてよい。

 

有効なアスペクト・レシオは、展開形状に近い値になるはずで、

滑空比(L/D)を極大化するという今回のたくらみについて、

考えられることを一通り盛り込んだ、

主翼形状が完成した。

 

なお、後縁を後退角ゼロの直線としたのは、

上反角を付与する工作で、翼を丸いペンに巻き付け、

後縁を一致させるように成型すれば、

ウイングレット部分の取り付け角が正しいかどうか、

悩まなくてよいからというのが、一番大きな理由だ。