現実と虚構の境界線は見極めて跳ぶ | 茶腹も一時

茶腹も一時

原作不足の飢えを蛸の身喰いでしのぐ二次小説群。
ジャンルは主に特撮、たまにそれ以外。まれに俳優・松山英太郎さんの備忘録。

幸せな物語が好きです。
途中につらいエピソードがあっても、それを払拭するカタルシスのある展開とハッピーエンドがあって欲しいです。

と、思いながらも。
最近、ついつい読んじゃうんですよね……、ディストピア小説

※ディストピアとは広義では「管理社会」系と「世界が崩壊して無法地帯」系など広く「ユートピアの逆」ですが、狭義では前者がディストピアで、後者はポストアポカリプスと言うそうです。

偏見なんですけど、ディストピア小説ってパターンがたいがい決まってて、高確率でハッピーに終わらないんですよねー
(パターンをまとめたけれど長くなったので割愛)
でも、なんか読んでしまう。

ディストピアとサイバーパンクは相性がいいので単に格好良いとか

(観てないけど「マトリックス」とかは最たる例なのでは?)

「ああ~気がつくと壮大な世界に翻弄されてるー!」

っていう物語を楽しみたいとかの理由もあるんですけど。


まあそんなわけで今のところ以下四つ

『ザ・ギバー 記憶を伝える者』(ロイス・ローリー著/掛川恭子訳/講談社

 

管理社会を円滑にするため、代表として一人の人間が歴史を記憶している。
一般市民は正しい歴史を知らされていない。
そして次世代の記憶者に選ばれた少年の話。
児童書ながらなかなか重くて良いです。 現在は「ギヴァー 記憶を注ぐ者」という別の出版社からの新訳が出てたり映画化されたり実は四部作だったりするらしいです。他三作を読む機会があるといいな。

『カッシアの物語』(全三巻。アリー・コンディ著/高橋啓訳/プレジデント社)

 

コンピュータが選んだ結婚相手は紳士でステキな幼馴染!
でも謎めいた別の男性に恋しちゃった!
両方からモテモテでアタシどうしたらいいの~?
っていう恋愛要素がありつつガッツリディストピアなのでティーンズ女子向け。

『織られた町の罠』(エンミ・インライタ著/末延弘子訳/西村書店)

 

北欧の作家さんとのことで、北欧ファンタジーな雰囲気でディストピアというのはちょっと珍しいのでは。
なかなか進まない展開に若干イラっとしましたが、とにかく雰囲気が綺麗。

『うそつき、うそつき』(清水杜氏彦/早川書房)

 

首輪の光の色で嘘をついてるかどうかがわかるという、一風変わった管理社会。
エンタメとしてのケレンがあり、ミステリっぽい要素とキャラの切なさが大変よかったです。
ちょっとポストアポカリプスな雰囲気もあります。

なんで読んじゃうのかなあ、と最近の読書傾向(これとかこれ)を振り返って、なんとなく納得。

第二次大戦下のドイツとソ連は、現実に存在した最も有名な

 

「限りなくディストピアに近い国」

 

なんですねえ。
(ディストピアとして思いつく国は他にも色々ありましょうが、さておきます)

それもそのはず、ディストピア小説の始まりは
「いまのこの国が行き過ぎるとこうなるんじゃ? と感じた作家さんの警告」
だったのでしたという話は読書家の皆様におかれましては常識なのでしょうが、どっこいサッパリ知らなかったので己の無知を晒しておきます!
反省!
昔の基礎の基礎なディストピア小説も探して読める限り読もう!

で。
しみじみと思うのです。

ありがたく、警告を受けておこう、と。

 

私は頭があんまり良い方ではないので、虚構を経るほうが、現実をよりすんなりと理解するとっかかりが得られるようです。

感情が動いたことのほうが、より把握できるってことでしょうね。

 

これからも第二次大戦下のドイツとソ連についていろいろ読むと思います。
それについて心のどっかにちょこっとだけ
「リアルなディストピアがどう始まり、何を経てどう終わったのかを知りたい」
という下衆な動機があることを白状しておきます。
そしてそれとともに、架空のディストピア小説を楽しむと思います。

 

しかしきっかけは下衆でも、その行為が歴史を知り、未来への教訓を学ぶ糧になってくれればと。

ディストピアのジャンルに限らず虚構と現実、両方を巧く行き来して、いろんなことを知って行けたらと思います。

 

で、現実方面ですと
『セカンドハンドの時代――「赤い国」を生きた人びと』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著/松本妙子訳/岩波書店)
が凄かったです……!
ソ連崩壊後のロシアでひたすら一般市民にインタビューしてる内容なため、とても判り易い文章で、すごい生々しさを帯びた
「リアルなディストピア崩壊後って、こんな問題が山積みなんだなあ」
という現実が、これでもかこれでもかと怒涛のように押し寄せます。
ただ、これ読む前にソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの日記』辺りを読んどいたほうが理解が深まるんじゃないかと思います。

 

……なんて書いてますが。

もっと理解するならドストエフスキーとかも読んでおいたほうがよさそうでした。反省2!