シンケン VS カクレ "忍侍超変化" その1 | 茶腹も一時

茶腹も一時

原作不足の飢えを蛸の身喰いでしのぐ二次小説群。
ジャンルは主に特撮、たまにそれ以外。まれに俳優・松山英太郎さんの備忘録。


●まえがき(ご注意)


つぅーわけで始まった侍戦隊シンケンジャーと忍者戦隊カクレンジャーのおはなし。
忍者戦隊カクレンジャーが妖怪たちと戦いを繰り広げた、あれから時代はどひゅーんと流れて十五年!
今やアヤカシどもと戦う第一線は侍戦隊シンケンジャーなのでありますが。
その新旧戦隊が出会ったとしたら?
以下の注意に気をつけて、よかったら読んでいただきたいと、こういうわけであります!

・シンケンジャー第二十二幕『殿執事』後くらい(インロウマル制作前)の話だと思ってください。
・シンケンジャー(2009年)に合わせて、カクレンジャーのメンバーも15年分の歳をとっています。
・カクレンジャーについて、なるべくネタバレしないよう努力しましたが、展開上、一部のキャラとラスボスについてネタバレがあります。
・「シンケンジャーは観ているけどカクレンジャーを観ていない」という方々も読めるように書いたつもりですが、至らない点もあると思います。この機会に是非ご覧あれ。
・逆に「カクレンジャーは観ているけどシンケンジャーを観ていない」という方々には若干読みづらいかと思います。この機会に是非ご覧あれ。

では本編をどうぞ。


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●序幕 ~サスケ

 白い薔薇は、鋭い棘すら脆弱とばかりに無残に踏み潰されていた。
 数分前までは個人の邸宅とは思えないほど、手入れの行き届いた薔薇園だったのが、目下では見る影もない。庭師や無数の使用人も、蜜蜂のように勤勉な日常を奪われ、薔薇の生垣の小道に累々と横たわり蠢いている。
 その中に薔薇よりもなお白い忍装束を見つけて、サスケは声を上げた。
「鶴姫!」
 駆け寄って抱き起こす。
 華奢な身体は小刻みに震えており、細い首筋には蒼黒い梵字に似た印が貼りついていた。
 柔らかな唇が苦しげに何かを囁こうとしたとき、背後から長い影が落ちた。
 振り返れば、人よりも二周りほど大きく蒼褪めた異形の存在がこちらを見下ろしている。
 サスケの背に緊張が走ったのは恐怖からではない。
 異形の髪に、見覚えのある赤と緑の組紐を見つけたからだった。確か三日前に鶴姫が結んでやったものだ。
 サスケは異形に呼びかける。
「ブン、なのか」
 異形の代わりに、腕の中で鶴姫の掠れた声が、そう、と答えた。

(つづく)


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