考察:何故フーカは急にリンネを讃え始めたのか? | Nより

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OVA episode13でフーカはリンネをヴィヴィオやミウラと良い勝負ができているからいいと讃え,Blu-ray/DVD4巻付属の漫画episode12.5では,「(自分とは)選手としての格が違います」「ワシはまだまだリンネには胸を借りる立場」と発言している。
しかし,episode9では「お前,弱いのぉ」と罵倒し,続くepisode10では「今のお前には負けはせん」とまで宣言している。
つまり,フーカはリンネとの対決の前後でリンネに対する態度や評価をかなり改めているのである。
では,2人の対決後にリンネが爆発的に強くなったかというと,そうとも言えない事実が作中に現れている。アインハルトとの差である。
ヴィヴィオ達に対してギリギリというリンネの言葉を謙遜と捉えても,アインハルトには敵わないというのは客観的な事実と考える。何故なら,アインハルトを目標に格闘技をやってきたリンネ(更には彼女のコーチであるジル)にとって,アインハルトに勝つということは非常に重要な事柄であるから,それを達成したにも関わらずそのことに触れないのは不可解であるし,また,フーカにとっても自分の師が倒された事実があるならば,それを話題にするのが自然と考えられるからである。
これを裏付けるかの様に,フーカリンネ共に,アインハルトのことは別格と称している。
つまり,2人の対決を通して変化したのはリンネの強さではない。
もともとリンネはミウラをほぼ打撃技のみでくだし,ヴィヴィオに重傷を負わせる程の強さを有していた。ヴィヴィオに対しては2戦2敗だが,何れも僅差であった。
リンネは良くも悪くもそのレベルの強さであり,13話時点でもそれは変わらないと解するのが相当である。
したがって,フーカの態度が変わった原因は,リンネの格闘家としての腕によるものではないと考える。
この様に,リンネの戦闘力について大きな変化はなかったが,リンネの内面については対決の前後で決定的に変化している。この変化については改めて語る必要もないだろうが,纏めるならリンネはその高い格闘能力を除けば昔のリンネに戻ったと言えるだろう。
フーカを愛し,他人を気遣い,明るく笑う少女,施設にいた頃のリンネはそんな少女であり,対決後のリンネもまたそんな少女である。
では,そんなリンネをフーカが罵倒しようと思うだろうか。
フーカがリンネを口撃したのは,リンネが「人を見下し貶めるくせに,辛くなったらすぐに逃げ出す」人間になったと思っていたからであり,事実,リンネの「私は世界中で誰より私が嫌いなの」という台詞の後は一切その様な言葉を発しておらず,むしろ協力を申し出ている。
即ち,リンネが「人を見下し貶めるくせに,辛くなったらすぐに逃げ出す」人間でなくなった,少なくともなくなったとフーカが考えている以上,もはやフーカがリンネを責める理由はないのである。
そして,逆に施設にいた頃のリンネは,フーカが誰より大事な幼馴染と称し,護りたいと願っていた少女である。
そんなリンネの精神状態をフーカが気遣うのは,むしろ当然のことと言えよう。
リンネには2年あまり格闘競技をやってきた自負があって不思議でない。ランク1位からチャンピオンに上り詰めたプライドもあっておかしくない。
フーカがリンネに勝つことは,2人の仲直りとリンネの救済の為に必要な出来事だっただろうが,そのことが必要以上にリンネの心を傷つけることのない様に配慮をする。相手が対決後のリンネであれば,フーカがそうしたいと考えることは想像に難くない。何故なら,この時のリンネはもうフーカが誰よりも大切にしていた,護りたかったリンネそのものだからである。
以上の事柄を前提にすれば,これこそがフーカの態度が急に変化した理由と考えるのが最も自然だといえよう。
リンネが格闘競技にかけた時間の長さと過去の戦績に敬意を評し,リンネの方がランクもキャリアも上だという何人も否定できない客観的事実を誇張することで,敗者であるリンネの精神をさり気なく気遣っている。
今のフーカの言動は,凡そそんなところではないだろうか。
少なくとも,リンネがチャンピオンになったことに感涙している今のフーカは,リンネのライバルというより,仲間・友人という側面の方が強いと考える。

原作:都築真紀