許し合った未来〜ルート144の物語〜(5) | なおちゃんねる

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夢を見た。
昔,フーちゃんとよく行った,今はもう無くなったお店にあった子供用の遊び場で,フーちゃんと駆け回る夢だった。
こんなことは過去,何度も現実にあった気がする。
でもお店はもう無いし,あったとしても流石にもうそこで遊ぶ様な年齢ではない。
何より,私はもうフーちゃんの友達じゃない。
2年前,私が弱かったせいで大切なものを失ってしまった。
だから私は強くなりたいと願い,実際に強くなった。
昔,私が虐められた時にはフーちゃんが前に立ってくれていた。私を護ってくれた。
だから今度は,私がフーちゃんの前に立つ。フーちゃんを護る……筈だったのに。
自分のやり方を否定された私は,あろうことかフーちゃんに拳を向けてしまった。
護りたかった人を,自分で傷つけてしまった。しかも,二回も……
強くなるだけでは足りないんだ。強く見せなくちゃいけない。
こいつには関わらない方がいいと,相手に思わせなくちゃいけない。じゃないと,例え勝っても余計な闘争に時間を費やし,間に合わなくなるかもしれない。あの時みたいに……。
フーちゃんは,そこが分かっていない。だから,私のやり方,生き方が理解できないんだと思う。
でも,本当はそう言えばよかったんだ。
本心を言葉で伝えれば済んだ話だった。いや,そうしなければいけなかった。
何でだろう。昔はフーちゃんと諍いになっても,ちゃんと気持ちを口にできたはずなのに。
勝てる様になっちゃったからかな。
昔と違って,私の方が強くなったから,つい拳を放ったのかな。
でも,昔フーちゃんはそんなことしなかったはず。
私は強さに酔っちゃっていたのかな?
弱いまま一生を送るはずが,突然強さを手に入れてしまったばかりに。
まあ,正直手にした力もフーちゃんの比じゃなかったからね。
でも,私はまだフーちゃんに憧れている。
大事な人の為に,前に立つ心の強さを,結局私は手にすることができなかった。
この憧れはずっと続くのかな?
フーちゃんがピンチの時には,私だって前に立ってフーちゃんを護れたりするものなのかな?
そんな訳ないよね。
だって,私はフーちゃんを二度も傷つけたんだ。護れる筈なんてない。
結局,私は本当の意味で,未だフーちゃんには敵わないんだろうな。
やっぱり私はフーちゃんとは違う。ナカジマジムの人達といるフーちゃんを見れば分かる。
競技を始めて1週間って言ったっけ。ということは,多分まだジムの人達とも知り合って1週間くらいってことだよね。
仲良すぎでしょう。
仲良くなるの,早過ぎでしょう。
昔からそうだった。
私にはフーちゃんしかいなかったけど,フーちゃんの周りにはいつも人が集まっていた。
きっとフーちゃんはもう,いや,最初から私がいなくても大丈夫なんだ。
特に少し話すだけでイライラして,暴力を振るう私なんて……。
だから,やっぱりフーちゃんには私の気持ちは本当の意味では分かりっこないよ。
話さないことの言い訳にしているだけかもしれないけど,きっとそうなんだ。
弱ければ虐められる。強ければ離れて行く。その二択しか私にはない。そして,私は後者を選んだ。少なくとも,大切なものを失くさずに済むから。もっとも,フーちゃんは失くしちゃったけど……。
フーちゃん,競技試合に参加するとか言っていたけど,悪いけど全力で潰させてもらうよ。僅かな競技歴しかない選手に負けたりしたら,また弱いって思われちゃうからね。全勝記録は止められても,そこだけは譲れないんだ。
それに,どうせもう私はフーちゃんの友達じゃないから,エリートファイターとして新人を倒す方が得策だものね。
そう言えば,大会に参加するフーちゃんは大人変化していたりするのかな。思えば,夢で一緒に遊んだ私達は大人変化していた様な気がする。不思議だよね。フーちゃんの大人変化を見たことなんて一度もないのに……。
この夢の話は私とフーちゃんの思い出に関するものだから,他の人に話しても今ひとつピンとこないだろうし,そもそも,そんなくだらない話ができる人は周りに殆どいない。何より,フーちゃんと楽しく遊んだ夢の話なんて,悲しくなるからしたくもない。
かと言って,もちろん友達じゃなくなった今,フーちゃんにそんな話をする機会もその気持ちもない。
だから,この話はまだ誰にもしたことがない。