今流行のAIが主題のハラリ本。
これまで、同著者のサピエンス全史やホモデウスを読んできた。
いずれも歴史から人類の歩みを紐解き、色々な気づきを与えてくれたが、本書はちょっと趣が違った。
歴史に触れつつも、あくまで情報とAIに焦点を絞っている。
人間が如何に誤って情報を取り扱って虚構を作ってきたか。
それが、AIの登場で、より助長されてしまうリスクを指摘する。
この「虚構」という言葉は小坂井敏晶氏も度々取り上げており、
脳科学・認知心理学・社会心理学の実験を通じても、
社会環境や他者の行動・言説、さらには自分の無意識によって虚構が生み出されることが確認されている。
こうした現象を人間が作り出してしまうことを前提としたときに、
確かにハラリが警鐘を鳴らすAIのリスク(例:AIに人間がコントロールされてしまう)は現実味を帯びる。
一方で、人間はもはやAIを使わずに生きていくことはできない。
だからこそ、誰もが安全にAIを活用できるよう、何らかの規制を導入すべきだというのがハラリの主張だ。
AIに関して、奇抜な論を展開しているわけではない。内容自体は、どこかで聞いたことのあるものばかりだ。
そのため、特別に面白くて読み進めるという感じではなかった。
ただ、確実に来るであろう未来を改めて示してくれていて、それに対して準備するか、しないかは、
各人の未来にとって、大きな影響を及ぼすだろうと考えざるを得ない。

