少し前に読んだ本だが、感想を書き出すのに時間がかかった。

なぜなら、ここ最近読んだ小説の中でも最も自分に刺さった本だったからだ。

2024年は119冊を読んだが、本書が最も印象に残った。

 

物語は、主人公がイランで生まれ、幼少期をエジプトで過ごしたというエピソードから始まる。

この設定が、自分の生い立ちと重なる。

そして、自分では記憶にないが、母から聞いていたエジプト・カイロでの生活感が、

本書で描かれている情景そのもので、驚きの連続だった。

多くの場面で頷くであろう母にも、この部分をぜひ読んでもらいたいと思った。

 

主人公は小学校高学年以降、日本の関西で育ち、大学は東京へ進学する設定になっている。

年代が近いこともあり、共感できるシーンが数多く詰まっていた。

さらに興味深かったのは、主人公の体験が著者自身の経験をベースにしているであろう点だ。

著者は女性だが、主人公は男性として描かれており、

男性特有の体験についてはきっと近しい男性の経験を参考にしたのだろう。

 

自分の世代の多くの日本の若者が通ったであろう状況や感情が巧みに描写されており、

本書の世界にすっかり引き込まれてしまった。

 

また、姉が宗教に傾倒する話も、身近な出来事として重なる部分があり、他人事とは思えなかった。

 

物語の中で描かれるエジプト時代の友人との再会や、

高校時代の友人との社会人になってからの再会など、

驚きや感動、さまざまな感情が渦巻く展開が続き、一気に読み進めた。

 

著者が自身の半生を小説として形にするには、

最後に記されていたように、多くの時間と忍耐が必要だったのだろう。

 

その努力の甲斐あって、自分のような他人でも存分に楽しめる作品に仕上がっている。

それだけでなく、著者自身にとっても、人生を振り返る良い機会になったのではないかと感じた。

 

本書の魅力は、著者が日常のささいな出来事を丁寧に拾い上げ、その時々の心の動きをうまく表現している点だ。

それが物語を豊かにし、読者を惹きつける。

きっと、そうした描写は日常をつぶさに観察し続け、文章を丁寧に描き続けてきた努力の賜物なのだろう。

 

自分にはまだそのような蓄積はできていないが、

本書を読んで、自分もこんな小説を書いてみたいと思えた。

 

繰り返しになるが、心を揺さぶられる素晴らしい作品だった。