盤石に見えた財前五郎の資金力と政治力にも、
少しずつ綻びが見え始める。
これまで絶対的な自信を誇ってきた彼だが、さまざまな場面でその揺らぎが垣間見える。
自らのやり方に疑問を抱き始めたのかもしれない。
善悪を問わず、名誉を手にするため突き進んできたが、
その善悪の議論に足元を揺さぶられつつあるようにも映る。
世の中に絶対はない。清廉に生き、努力を積み重ねたからといって、
人生の成功が約束されるわけではない。
一方で、成功に執着し、どんな手を使ってでも手に入れようとする者に、
それが約束されるわけでもない。
そもそも、「成功」とは何なのか。
人それぞれに背景や生い立ちがあり、求めるものが異なれば、成功のあり方も変わる。
本書に登場する人物たちも、それぞれの「正しさ」に突き進む。
その果てに、彼らなりの「成功」に近づいていくのだろう。
厄介なのは、世間一般に通用する「成功」という概念が、
あたかも普遍の価値であるかのように存在していることだ。
しかし、そんなものは脇に置き、自らの本質を見つめ、それを追求できるかどうかが重要なのだろう。
そして、財前五郎の心にも、迷いが生じ始めているように見える。
