太宰治の作品をちゃんと読むのは、これが初めてだ。
「斜陽」という題名に惹かれて手に取ったが、こんな話だったのかと思った。
事前に特別なイメージがあったわけではないが、不思議な感覚を抱く話だった。
恵まれているはずの貴族でありながら、
敗戦を背景に、生きづらさを感じているその実態が、
自身の半生を踏まえながら描かれているのだろう。
どの時代にも、芯を持って一生懸命に生きようとする女性と、
精神的に弱り、自堕落の末に自死を選んでしまう男性という構図があり、
本書にもそのパターンがしっかりと踏襲されている。
それは、人間の真理なのだろうか。なぜその真理が人間社会には深く根付いているのだろうか。
それでも、なぜ女性たちは社会を根本から変えることに至らないのだろうか。
本書のメッセージを完全に受け取ったとは思えないが、読後に改めてそのような思いを抱いた。
