自分の性分に合う一冊だった。

 

異文化や人種、日本人としてのアイデンティティについて考え、悩んできたこと。
フランスやフランス語との関わり。
組織の論理よりも、自分の美学を大切にしようとする姿勢。
そして、考え続けることの意味。

 

そうした自分の軸を見つめ直すきっかけを与えてくれる本だった。
人生の後半戦を迎えた今、その著者の姿勢や生き方には多くを学ばされる。

他の著作もぜひ読んでみたい。

 

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  • 知識を増やすのではない。壊すことの方が大切だ。慣れた思考枠を見直すのである。問いとは何か。
  • 矛盾のおかげで、新しい視点に気づくからだ。矛盾はまさしく、従来の理論に問題があると示唆している。
  • 矛盾に対して安易な妥協を求めてはならない。逆に矛盾を極限まで突き詰める意志が世界観の再構成を胎動させる。
  • 人間や社会を対象にする学問において大切なのは創造性ではない。自分自身と向き合うことだと私は思う。
  • 人文学を勉強しても世界の問題は解決しない。それで社会が少しでも良くなるわけではない。自分が納得するために考える。それ以外のことは誰にもできない。
  • 独創性の呪縛から解放されよう。他人の目を気にせず、自分の疑問だけを追えばよい。
  • 答えをすぐに出そうとする者は現実を正視しない。知らず知らずに根本的な問題から逃げている。 大切なのは、答えよりも問いである。
  • 自分の頭で考えるためには、どうしたらよいか。専門用語を避けて平易な言葉で語る。これが第一歩だ。
  • 大切なのは、自分自身の疑問を持ち、それに何らかの答えを与えること。
  • 慣れ親しんだ思考枠から抜け出すためには、研究対象だけ見ていても駄目である。問題に対峙する人間の世界観や生き方が変わる必要がある。
  • テーマは直接表に出さず、ストーリーの深部で響かせることが大切だ。そのためには感情に訴えるのが一番良い。説明されるよりも、感激して夢中になる時に人間はよく学ぶ。
  • 「本を読め。それが学ぶための唯一の道だ」
  • 先達の思索や試行錯誤から何を受け取るか。我々に重要なのは、それだけだ。
  • 「正しい答えが存在しないから、正しい世界の姿が絶対にわからないからこそ、人間社会のあり方を問い続けなければならない」 これが私の考えである。
  • 真理はどこにもない。正しい社会の形はいつになっても、誰にもわからない。
  • 自己のアイデンティティが崩壊する恐怖に抗して、信ずる世界観をどこまで相対化できるか。 異質性への包容力を高め、世界の多様性を受けとめる訓練を来る世代に施す。これが人文学の使命である。
  • なぜ異端者が必要なのか。それは、答えが原理的に存在しないからである。解のない世界に人間は生きる。そこに異端者の存在意義がある。
  • 考えることの意味を知ることが重要だ。 「人間の原理的な限界に気づく」 それ以外のことは重要でない。
  • 「どちらの社会に対しても、異邦人として生きればよい」 これが問題解決の鍵だった。フランスと日本を個別に捉えるのではなく、両者の関係あるいは差異に視点を移せばよい。
  • 国際人という言葉がある。自国と外国の文化に精通し、どこにいても、その土地の人々と同じように振る舞える者のことを言う。国境に拘らず、普遍的な価値観で生きる人を意味することもある。グローバル人材やグローバル・リーダーという新自由主義の呪文も同じである。  私が目指したのは、その逆だ。フランスでも日本でも自然に生きられる国際人ではなく、どこに居ても周囲に常に違和感を覚える異邦人。グローバル人材の反対に位置する社会不適応者、非常識人間である。
  • 人生に成功するとは、どういうことか。自分が本当にやりたいことをして生きることだろう。だから物になれずに、成功していないと感じるのは、自分のやりたいことができていないからに違いない。
  • 毎年帰国すると、中学の同級生一〇人ぐらいと旅行に出かけ、酒を飲みます。集まりはもう一〇年以上続いています。銀行員も役人も医者もいる。彼らは私よりも高給取りですが、違う職業だから比較しないし、羨ましいとも思わない。これって大学も同じです。学会で認められる論文を書いても良いし、私のように実証研究をやめて好きな本を書くのも良い。学内政治に精を出して権力を牛耳るのも良い。自分の好きに生きる。大学にいるからって、皆が皆同じことをする必要はありません。医者と弁護士は違うことをする。それと同じです。もちろん私のようなやり方では出世しない。でも、いいでしょう。出世コースを歩む道もあるし、他のやり方もある。音楽家でも画家でも様々な活動の仕方があります。そんな当たり前のことに、やっと最近気づきました。

  • 人生の第四コーナーを回り、最後の直線コースに入った。残りの時間は有意義に使いたい。これから私のしたいこと、私のすべきこと、私にできることは何だろう。  考察対象から距離をとり、価値判断を可能な限り排除するアプローチを私は採ってきた。 「事実から当為は導けない」 これが科学の基本原則である。