コーチングは数年前から自分の中における関心事として、残り続けている。

きっと、その効用なのか、その取組自体になのか、興味があるのだろう。

人と話すときにコーチングの技術を意識しているし、

自身も1か月に一回、コーチングをかれこれ4年近く続けてきて、

為になっていると感じている。

本書は、これまで続けてきたコーチングの良い復習になったし、

改めて意識すべきことも書かれていた。

  1. 「何が問題」かではなく、「何が大切なのか」を意識する。
  2. 相手の話を、不平不満だと思って聴かずに、踏みにじられた大切なものの回復を求めるストーリーとして聴いてみる。
  3. 目立たないながら重要な細部がちゃんと機能していることに気づくと、物事の見方が変わってくる。
  4. 相手のストーリーの影を追わずに光を追うほうがよい。
  5. なくしたいものと格闘するより、欲しいものの獲得を目指す。
  6. まずは自分がその人の立場ならどんな気持ちか、思いめぐらしてみる。

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  • 対話の相手が「望ましい自分になりつつある」ことを先入観なしに信じる「ラディカル・アクセプタンス(あるがままの受容)」は、プロのコーチ専用のツールではない。大切な人たちとの関係を修復したり固めたりするために、誰もが使える接着剤である。
  • 私はよく「コーチングをどう定義していますか」と聞かれる。その問いに対する私の答えは、「目的・可能性・前進のストーリーをキュレートすること」。英語の「curate(キュレート)」という単語の語源は、ラテン語で「大切に扱う、気遣う」といった意味の名詞curaである。
  • あなたが、相手の話のどの部分に関心を持つかで、その人自身が注意を向ける先も決まる。
  • あなたが、「何が問題なのか」に関心を持つと、何が間違っているのか、何がうまく機能していないのか、何が障害となっているのか、といった点を掘り下げる作業を相手に強いる質問を投げかけてしまう。一方、対話の相手にとって「何が大切なのか」に関心を持てば、その人を、本当に大切なものや夢中になれるものを発見する旅にいざなえるのだ。 
  • 私は「そうですか、すでに6なのですね。どうやって6に進みましたか?」と尋ねた。すると彼女は、「前回お会いしたときから、多少は進歩したと思います」と言って、なぜ今日は1でも2でも、5でもなくて6だと思うか、自ら説明してくれたのだ。つまり、何か足りなかったのではなく、何かを有していたわけである。これは「利益」のフレーミング効果である。 
  • 利益のフレーミング効果を用いて自分の進歩に目を向けるようになれば、その進歩を促した何か(または誰か)の存在が明確になるかもしれない。そもそも段階評価は、進歩を具体的に示すツールである。つまり、焦点は「どうやってすでにそこまで来たか」であって、「どうすればもっと高い数値に届くか」ではないのである。 
  • 「0.5伸びるといいわけですね」 「はい。小さな前進ということで」 「それでは、6.5になると、自分のどんなところがその時点で十分だと思いますか」 その人は、どうすれば0.5伸ばせるかではなく、0.5伸びると何が十分になるのか説明してくれるだろう。そうしてその人が自分の生き方のロジックを語ってくれて対話が続いていく。
  • 対話の相手の話を、不平不満だと思って聴かずに、踏みにじられた大切なものの回復を求めるストーリーとして聴いてみてはどうだろう。繰り返し聞かされる文句が、実は、ポジティブな変化を求める切実な訴えだとは考えられないだろうか。 
  • 聴き手は、よく、相手が語る近い未来の展望を、その人が望む終着点だと勘違いして、そこに向かって問題解決に取りかかってしまう。けれどもコーチングでは、その近い未来の展望を、その人が望ましい方向に進む途中にある1つの出発点と考え、そこから道を作り始めるのだ。それを踏まえて、会話の相手への問いかけを次のように変えてみよう。 
  • 目立たないながら重要な細部がちゃんと機能していることに気づくと、物事の見方が変わってくる。周囲の人たちについて絶えず評価を下すのをやめ、その人たちが日々前進するのを見守り、いつでも手を貸せるようにスタンバイしていられるようになるのだ。 
  • 対話では、相手のストーリーの影を追わずに光を追うほうがよいのだ。影の部分は、その人が光に向かって立ち、光に照らされてできる影だと考えるといいだろう。相手が背負っている「不安」という重荷を一緒に開いてみると、その人は、自分の肩にのしかかっていた不安が、実は夢の実現への「熱意」と表裏一体だとすぐに気づくはずだ。それがわかれば、不安はむしろモチベーションを高める推進力になるのだ。 
  • 私たちが投げかける質問には、世界のありようを決める働きがあるのだ。そう考えると、「要求した分しか返ってこない(You get what you ask for)」ということわざは、そのまま対話の質問者にあてはまると言えるだろう。 
  • コーチングの対話に限らず、誰かにポジティブな変化をもたらすのが目的の会話は、「どちらへ?」の問いで始まるべきだが、私たちはよく「どちらから?」という問いから始めがちである。これは、「問題は何か?」と問う癖のせいではないかと思う。つまり、問題を特定すれば相手が抱えている悩みを解決できる、と考えるからなのだ。 
  • ジェリーは「〇〇をなくしたい」という、いわゆる「回避目標」を目指している。つまり、力量不足の人たちと一緒に仕事をするという不快な状況を避けたがっているのだ。実は、よくある新年の抱負は多くが回避目標である。例えば、禁煙する、減量する、お金や時間の無駄遣いをやめる、など。こういった目標を立てると、ほぼ間違いなく挫折する。私はジェリーとの対話をこう続けた。「もし仮にストレスがなくなったら、ストレスの代わりに何が得られると思いますか?」するとジェリーは、「休養です。頭を休められます。プロジェクトの企画や何やらがなくなって、落ち着きを取り戻せます。ストレスなしに、みんなで和気あいあいと仕事をする余裕が生まれます」 何かをなくすことではなく、得ることを目指しているのだ。なくしたいものと格闘するより、欲しいものの獲得を目指すほうがずっと楽である。 
  • ストーリーには、そもそも語り手がなぜ変化を望んでいるのか(目的)、変化の実現にどんな手順を選んでいるか(手段)、変化の成果として何が得られそうか(可能性)、何がすでにその方向に向かっているか(前進)のプロットがある。聴き手が、この「目的」「手段」「可能性」「前進」の筋書きを拾いながら耳を澄ませると、「規則違反の物語」も、「顧客への約束を確かなものにする、躍進の物語」になるのだ。人が愚痴をこぼすとき、そこにはその人の価値観が隠れている。 
  • 対話に臨む際は、その人の生き方については、本人が一番よくわかっていると考えてほしい。コーチングの対話における聴き手の役目は、「この人はどんなロジックに則って生きているのだろう?」と探索し、相手の生き方のロジックの証人となることなのだ。そのとき、あなた自身のロジック(周りの世界をどう認識し、筋道を立てて解釈するか)が邪魔すると、相手のロジックを引き出せないかもしれない。相手のロジックを理解しようと努めなければ、見当違いな意見を言ったり、現実的でない提案をしたりするのが関の山である。誤解のないように付け加えると、私は、聴き手であるあなたが相手のロジックに建設的なインプットを行う意義を否定しているのではない。ただ、本当に相手の役に立つ最善の方法は何だろう、と思いめぐらしている次第なのだ。 
  • あなたも、次回誰かに助言したいと思うとき、まずは自分がその人の立場ならどんな気持ちか、思いめぐらしてみてはどうだろう。その人は、どんな能力を発揮して頑張っているだろうか。それをあなたが承知していることをどう伝えたらよいだろうか。そうしてその人に備わっている「資産」の証人となりつつ、あなたの見地から何を貢献できるだろうか。