フロムも「戦争と平和」と同様、「人類は一つであるという信念」「人間の尊厳」「愛とヒューマニズム」を説く。
行きつくところ、どこまで行っても、この世界、一人では生きていけず、「愛」に生きなければならない。
しかし、その時に権威や同調圧力に屈することなく、
「良心の声を聞く」「真の自己の声に耳を傾ける」ことで自分の信念を貫き、生きていくべき、という。
やはり、こういった所に人生の真理があるように思わされる。
良い本だった。そして、ナレーション(近藤浩徳さん)の声が渋く、話し方がとても良くて聞きやすかった。
- フロムは、現代人の基本的な病理は「孤独」にあると考えている。そして、「孤独」を根本から解消するためにフロムが最も重要視するものが「愛」と「ヒューマニズム」。
- フロムの言う「ヒューマニズム」の原理は以下の三つ:
- 人類は一つであるという信念
- 人間の尊厳の強調
- 人間が自己を発展させ、完成させる能力の強調 (更には理性・客観性・平和の強調)
- 「我々が皆一つであるのは本当だが、我々各人が独自の存在であり、それ自体が一つの宇宙。(中略)一人の生命を救うものは誰でも全世界を救ったのと同じ。一人の生命を滅ぼすものは全世界を滅ぼしたのと同じ」
- 人類は一つとは、誰もが同じ人間性(humanity)を持っており、一人の人間が全人類を代表しているという意味。
- 同調圧力に屈すると言うことは、「私」という個性を失うこと、もっと言えば自分を捨てること。
- 同調圧力に屈している人は、「自分の考えを持たない者はもはや人間ではなく、いつまでも他の誰かと交換可能な単なる人材でしかない」。
- このような現代人を危機から救う方法としてフロムが重要視したのが「理性」。ここでいう「理性」とは「考える」・「見抜く」行為。
- 「私」という個性を失いたくないと思うならば、権威に従わない道を選ぶしかない。それが「目覚める」ということ。
- 「目覚める」ために重要な行為。それは「良心の声を聞く」「真の自己の声に耳を傾ける」ということ。そのためには「ひとりでいる能力」が必要。
- 孤立することへの恐怖や、将来に対する不安から逃れようと、私たちは娯楽やおしゃべりに没頭しようとする。もちろん、一時的に逃れることはできる。しかし、不安を根本から解消するものではない。
- 唯一の解決策は、「自分は基本的には一人であり孤独であることを認め、自分の問題を自分のために解決しうる、自分を越える力はないと認めること。自分は自分に対する責任と自分自身の力を使うことによってだけ、自分の人生に意味を与えることができるという事実を認識すること」
- 本当に自分がしたいこと、自分の信念は何か?と自分自身に問いかけ、それを貫くことでしか真に幸福にはなれないということ。自分自身であること、自分自身のために生きることが何よりも大切。
