おぼろげながらしかわかっていなかったカントの言いたいことが、

本書を通じて、少しは体系的に把握できた気がする。

 

自然状態のままの人間は、生き残りを図るために闘争せざるを得ない。

そこに法の支配を持ち込むことで、安定をもたらす。

しかし、その法の支配を機能させるためには国家という暴力装置が必要となる。

今度は国家間の闘争が懸念されるが、それを統治する世界国家の樹立をめざすのではなく、あくまで法の支配の延長で調整を図ろうとする。

 

カントは平和や政治を考える際の哲学者の存在と地位を、

本書を通じて確立させることにつながったのではないか。

  • 平和を実現するためには、たしかに国民が主権者として自己決定権をもつことがまずは重要。しかし、それだけでは不十分であり、その自己決定権は立法権として政府の執行権(行政権)から区別・保護される必要あり。
  • カントは世界国家ができることによって平和が実現されるというビジョンを否定。
  • 永遠平和のために必要なのは、世界国家によって維持される法の支配ではなく、諸国家のあいだの連合によって維持される法の支配。
  • こうしたカントの考えは国際連盟や現在の国際連合の基礎となった。
  • 世界国家が成立するとすれば、それは実際には強大国が武力を背景にしてみずからの言語と価値観を他国に押し付けていくというかたちでしかありえない。
  • 世界市民法の理念がなければ、地球上の人びとは他国の人たちと安心して友好的な関係を築くことができた。
  • いかに人間は道徳的に悪い存在だとしても知性さえそなえていれば国家の形成にむかうはず。
  • 普遍化可能性(「自分だけでなく誰がやっても問題ないといえるかどうか」という判定基準に適合しうる)こそ、カントの考える道徳の本質にほかならない。
  • カントはこうした「条件つきの義務」である人間愛よりも「無条件的な義務」である「法にたいする尊敬」を優先させるべきだと述べる。道徳の「内容」ではなく「形式」を重視せよ、と。