良い映画だった。

アメリカの国内線で、ちょうど映画が観られる機体に乗り、少し気になったこの作品を選んだのだが、

これが例の Demis Hassabis 氏の映画だとは知らずに観始めた。

 

あまりニュースを追えていない自分は、

先日、同僚が Demis Hassabis 氏のノーベル賞受賞のすごさを興奮気味に語ってくれたことを思い出し、

「おぉ、これがあの Demis Hassabis 氏だったのか」とうれしい驚きを覚えながら観進めた。

そして、彼の圧倒的なすごさに改めて感嘆した。

 

若くしてチェスのチャンピオンとなり、飛び級でケンブリッジ大学に入り、

13歳頃からゲーム会社でゲーム制作を手掛け、大学卒業後は AI や ML を駆使して次々と新境地を切り開いてきた。

その経歴自体が、間違いなく天才であることを示している。

特に印象的だったのは、10歳ほどで出場したチェスの世界大会で30歳以上の相手に敗れた際、周囲のプレイヤーたちを見渡し、

「これだけの人の膨大なエネルギーがチェス盤に向かっている。この力をもっと世の中のために使うべきではないか」と思い、

その体験を起点に、AI の力を世界や社会のために注いできたというシーンである。

 

そして、自分が彼のもっともすごいと感じたのは、

その天才的な才能だけではなく、周囲を巻き込み、彼と一緒に成し遂げたいと思わせる人としての魅力だ。

映像を通じても、その人柄の良さや信頼感がにじみ出ていた。

彼ほどの天才であれば、一人でも多くのことを成し遂げられたはずだ。

しかしそれ以上に、人を惹きつけ、仲間の力を借り、応援される存在であるという点こそが、

最大の強みなのではないかと感じた。

 

とはいえ、彼自身が積み上げてきた努力と、生まれ持った才能は普通の人には到底まねできるものではなく、

「彼の人間性の良さ」のような表面的なコメントをしている自分が恥ずかしくなる。

それでも、これほどの才能を持ちながら、人間性までも成熟させてきたことには感銘を受けた。

 

映画の冒頭にもあったが、彼はキプロス出身の父とシンガポール出身の母のもとに生まれ、

移民としてイギリスに移り住み、経済的にも苦労していたようだ。

ギリシャとアジアの組み合わせからこのような天才が生まれたことにも、個人的にも感慨深かった。

 

日本で上映された作品かどうかはわからないが、自分にとってはとても刺さったドキュメンタリー映画だった。