泣いた。泣いた。ひたすら泣いた。

涙が止まらなかった。
声を出して、子供のように大きな声で泣き続けた。。。

こんなに泣いたのは何年ぶりだろうか?
30年?いや、もっと前か。3歳?2歳?1歳?
そんな時のように泣き続けた。

そして、泣いても泣いても涙が止まらなかった。。。。

始まりは些細なこと。
彼女の部屋でいくつか見慣れないものを見つけた。
1つはスポーツジムの会員証。
1つはフットサルのシューズ。
1つは男性の名刺。
1つはショーパブで撮った写真。
1つは後楽園遊園地のチケット。
1つは飲み屋の領収書。

昨年末から怪しい行動をとっていた事は知っていた。
でも、まさか嘘をついているとはこれっぽっちも思わなかった。
だから、とても軽い気持ちで「隠している事があれば話して」とお願いした。


最初は言い訳をしていた。
「ジムには前から行きたかった。」
「フットサルシューズはジムで使っている。」
「後楽園は女の子と言った。」


「まだ終わりじゃないよね?他にもあるでしょ?」
そこからさらに追求していくと、それ以上は早弥乃はなぜか
「言わない」の一点張りとなった。

ついつい、「え??」もっとすごいことがあるの??
と追求していくと、ついに「もう続けられない」と泣き始めた。

なぜなのか教えて欲しいと聞いたが、教えてもらえず、
つい、気になっていたことを口に出した。
「好きな人ができたんだね?」

その返答は「うん」という簡単なものだった。

まさか、早弥乃に限って、そんなはずはない!
信じられない、ありえない、夢?、嘘だろう、
冗談だろ、、、、
ありとあらゆる疑問の言葉が浮かんだ後、
頭が真っ白になった。
いや、また、泣き始めた。

早弥乃はすでにベッドルームで寝てしまっている。
一人リビングで泣き続けた。

そして、どうしても信じることができなく、
また、納得できずに、
「言い訳をして欲しい」と懇願した。

ところが、早弥乃は「いいわけは無い」と簡単に切ってしまった。

女性の心変わりが早いのは世の常。
今までどれだけ深い付き合いをしてこようが、
今まで何年連れ添おうが、他に好きな人ができたらそれまで、
というのはよく分かっていた。

それだけに辛かった。
朝まで泣いた後、早い電車で家に帰ろうと玄関に向かった。
泣きながら、ぶつぶついいながら玄関まで来た時に
早弥乃が出てきた。

「本当に終わりなの?」と聞くと
「うん」とうなずく。

本当にだめなのか?終わりなのか?
ああああ、という思いとともに
涙が出てきて、そして足が動かなくなった。
腰が砕け、玄関に倒れた。
そのまま泣き続けていたら呼吸が苦しくなり、
全身が痙攣し、息ができなくなってきた。

苦しみながら、もがきながら早弥乃を見ると、
哀れそうな目でこちらを見るきりで、
抱き起こそうともしない。

ああ、もうだめだ。

良く理解した。

すると少しずつ呼吸が戻ってきたので、水をお願いした。
ただ、全身の痙攣が収まらないため、水が飲めない。
するとストローをつけて飲ませてくれた。

その時に思ったのは、なぜ、口移しで飲ませてくれないのだろうか?
ということだった。

もう愛情がないのだな。というのが良く分かった。
辛かった。
苦しかった。

それでも帰らねばならないと思った。

荷物につかまりながら、無理をして立ち上がり、
そしてドアを開ける時にもう一度聞いた。
「本当に終わり?」

早弥乃は黙ってうなずいた。

震える体と止まらない涙をそのままにエレベータに乗った。
タクシーを待つ間、ずっと早弥乃が
「やっぱり行かせられない」と言ってくれるのを待っていたがなかった。

そして東京駅でも早弥乃を待ち、新幹線のホームでも待っていた。
それでも早弥乃は来なかった。

これが最初の別れだった。。。