酔いどれ詩人になるまえに -3ページ目

● 酒と親友、小さな巨人

 

俺のダチにトミーってやつがいて、そいつは酔っ払うと態度がでかくなる。

 

それだけだと、どこにでも居るただのメンドクセー野郎だが、トミーの面白いところは態度だけじゃなくて体もでかくなる所だ。

 

つまり、こういうことだ。普段のトミーは身長140センチしかないちっさな男で、誰にもで優しいいい男だ。

 

ところが、酒を飲むと次第に体がでかくなる。

 

一緒にバーに入ってまず1パイントビールを空けると身長が160センチ、二杯飲めば180センチで三杯目には2メートルピッタリになっている。そっから先はどんなに酒を飲んでも、トミーは全然大きくならない。

そして、一晩立って完璧に酒が抜けると元通りになる。

 

だから、トミーと俺がいつものバーで飲むときに、トミーは最初ブカブカのスウェットを着てるんだが、一時間もすると2メートルの大男になってスウェットをパツパツにしながら酒を飲んでることになる。

 

2メートルになった後のトミーも普段どおりいいやつだけど、口調が荒っぽくなるし全体的にマッチョな性格になる。

 

バーで飲んでて、チンピラに絡まれたときはトミーがそいつの首根っこ捕まえて、店の外に放り出したこともある。

 

小さいときはちょっと気が弱くて、おとなしいヤツだが2杯目くらいから(180センチ)だんだん気が強いマッチョなトミーに変身だ。

 

ただ、根は真面目だから自分から喧嘩を売ることもしないし、ユーモアもあるからバーの常連からも愛されてるヤツだった。

 

そんな伸縮自在のトミーと、いつものバー「ランバージャック」で飲んでると、ここら辺じゃあみかけないようないい女と、それに付きまとってるらしいチンピラが揉めながら入ってきた。

 

もう、その時のトミーの顔は一発で一目惚れですって感じだったし、その後のあいつはまるで映画の俳優みたいだった

 

チンピラの腕をつかんで「さっさと消えうせな、このトンマ野郎」と来たもんだ、あんまりにもびっくりして感心していいんだか、笑っていいんだかわからねえような状況だった。

 

そんでまた、その別嬪も2メートルあるトミーを見上げて「あんた、強く て優しいんだね」ってぞっこんだ。

 

こうして二人はあっという間に付き合うことになった。

 

そうしてから2ヶ月くらいして、バーで会ったトミーは意気消沈してた。

 

我らが親友、愛すべき小さな巨人トミーは、あの女に振られたらしい。

 

「チャールズ、俺はもうやってらんねえよ」

 

話を聞いてみると、経緯はこうだ。

 

あの別嬪とトミーは2ヶ月付き合ったそうだが、トミーはいつもデートの時は酒を飲んで、でかくなってから行くか、バーでデートかのどっちかだ。

 

別嬪のほうも、なんだかこりゃあ様子が変だってことで、トミーに問い詰めた。そんでそのときは誤魔化したらしいが、申し訳なくなって次のデートのときは素面で行ったら、すっかり振られちまったらしい。

 

今まであたしを騙してたとか、うそつきだとか、ちびだとか言われて、心底しょげちまった2メートルのトミーが、泣きながら今俺と酒を飲んでるってワケだ。

 

酒を飲めば飲むほど泣き出すトミーはしまいには死にたいだとか、戯言を言い出す始末だ。

 

そんな傷心しながら最後にはぶっつぶれたトミーをタクシーに乗せて、俺は家までの帰り道を歩いてたら、向こうから男と腕を組んであの別嬪が歩いてくるじゃねえか。

 

身長190センチはあるデカイ男と嬉しそうに歩いてる別嬪を見て、こいつはデカイ男が好きなあばずれだと俺は思った。

 

俺がどうも女を信用できねーと思うのは、態度がころころ変わるからだ。付き合い始めたときはおとなしくしてるが、だんだん長くなってくると細かいことや、詰まらないことを言い始めて最後は怒りながら泣き喚きやがる。

 

我が親友、小さな巨人トミーよ。お前が惚れた女はあばずれだ。だから、もう泣くのはやめろよ。そんなことを思いながら、俺はブラブラと帰った。

 

週末、いつものバーで飲んでるとデカイ男とすげえ美人が二人で入ってきた。女は男に何か言うと、俺の座っているカウンターのほうにハイヒールの音をコツコツさせながら歩いてきた。

 

元気?とゴージャスな微笑を浮かべて女は俺に声をかける。さすがの俺もドギマギしながら「うん」だとか「あー」だとか言ってると、女は「俺だ、トミーだよ」と抜かしやがった。

 

つまり、こういうことだ。あんまりにも傷心したトミーはある日、酒と一緒に睡眠薬を飲む。すると眠気がやってくるどころから、胸もケツも膨らんでプリッとした体になるわ。髭は消えるし髪は長くなるわで性別が変わっちまったらしい。

 

前からおかしな体質だとは思ってたが、俺にはわけがわからねえ話だった。呆然としてるとトミーは話を手短に話してくれた。

 

昼間、小さい体で街を歩いてると、あのあばずれとデカイ男がデートしてる姿を見ちまったらしい。向こうもそれに気がついて、あばずれは心底見下してあざ笑ったらしい。

 

そんで、復讐に燃える鬼になったトミーは一計。折角絶世の美女になったんだからって、なんと後でデカイ男に言い寄って、あばずれから彼氏を奪い取ってやったらしい。

 

言われてみりゃあ、今テーブル席に座ってるトミーの連れてきた男は、俺が前にあばずれと一緒に歩いているところを見かけたデカイ男だった。

 

トミーはカウンター席から立ち上がると、「またな」と言って俺のところから去っていった。デカイ男はトミーが実は男だってことを知らないらしい。しばらくしたら、適当に理由を付けて別れるそうだ。

 

俺はなんだか、色々考えようと思ったがどうも頭が混乱してダメだっ

た。仕方がないからバーテンを呼んで、ビールをもう一杯頼んだ。

 

チャールズ、さっきの美人は誰なんだい?ってバーテンが聞くから「トミーだよ」って答えたら、バーテンはポカンとした顔をしてこっちを見返した。

 

俺はそれがなんだかおかしくて、もう全部どうでも良くなって一人でゲラゲラ気が済むまで笑った。

 

 

● 読売ランド前の日高屋にはいつもドラマがある

先ほど、日高屋で中華そば・焼き鳥丼・餃子セットを晩御飯として食べた。

普段、あまり炭水化物を取らないようにしてるので、かなり大量に摂取したけれどもとてもおいしかったので良かったです。


という具合に日高屋ディナーを一日の締めくくりとして終わるはずだったのだが隣に座った男二人組みの会話が耳に入って仕方が無かった。

中華そばと焼き鳥丼を8割がた食べた後に出てきて熱々の餃子を、酢で冷ましながらモソモソと食べていると、二人組みのオタクが入店してきた。

おそらくは大学生であろう二人は少しアルコールが入っているのか、声が大きく、まあ端的に言うと「うるせえなあ」という感じだった。

カウンター席に座って、俺・オタクA・オタクBという並びである。

オタクAは髪がもじゃもじゃしていたので、今後は「モジャ」と、Bのほうはメガネを掛けていたので「メガネ」と便宜的に呼ぶ。

メガネとモジャは会話を聞いていると、どうもメガネの口数が多くテンションが高め。

モジャはそれに対してローテンションというか、すこしメガネにひいているように見えた。

メガネはチャーハンと餃子をオーダーして、モジャはウィンナーを頼んだ。

彼らはテーブルにあるお冷で乾杯すると、また会話を始めた。

メガネは一層テンションを上げながら、モジャに言った。

「おれ、普段は右利きだけど、チャーハン食うときだけは両利きになるんだよねー」

嫌な予感がした。ラーメンのスープで餃子を食うと、旨そうだけど行儀悪いから止めといたほうが良いかな、みたいな場末の日高屋にふさわしい思考が一瞬凍りついた。

メガネのほうにチャーハン(大盛)が来ると、案の定メガネはレンゲを左手、箸を右手にチャーハンを食い始めたのである。

モジャの方は、それを見てすごく微妙な空気を醸し出していた。

というか、引いてた。うわぁ~、という効果音がリアルに聞こえてきそうだった。

それを見て、なんだか自分もつらくなってしまった。あちゃ~、という感じである。

私は特にオタクが嫌いではないけれども、テンションの高いオタクは苦手である。

なんというか、見てるのがツライからである。

餃子にソースをかけてしまったような微妙な気分になりながら、私は日高屋を後にした。

私の住むエリアは女子大があるせいか、普段は酔っ払いも少なく静かな街である。

ただ、その反動なのか日高屋にはそんな「女子大」の空気を避けるように暮らしている人が集まる傾向にあるようである。

以前はすごく酔っ払って、二回のトイレで暴れていた客がいて、トイレに行こうとしたらからまれた。

ちなみにその客は最終的には店員さんから切れられて、二度と来るなと追い出されていた。

後日、駅のすぐ近くにあるリサイクルショップを通りかかると、店で暴れていた人が普通に働いていた。

小さい街のチェーン店で暴れると、危険だなと思った。

狭い町だから、結構顔を覚えてしまうものである。

ちなみにきこりで終電で帰ると、いつも顔を合わせるおじさんがいる。

よく見かけるから、なんだか顔を覚えてしまうのである。

そういうわけで日ごろの行いは大切である。

おそらく、リサイクルショップのあんちゃんも、何か嫌なことがあって思わず飲みすぎてしまったのだろう。

飲みすぎたときは気をつけねばならない。

自分も今後はきこりで裸にならないように気をつけなければなるまい。

話は変わるだが、この前テレビを見ていたら暴行事件の容疑者が飲み会で酔っ払ってふざけてる携帯の動画を放送していた。

以前から容疑者はこんなこと(人前で裸になってポーズ取ってる)をしているから、ろくでもねーやつですよ。という印象を与えようとしているようだった。

考えたくも無い話だが、私がもし事件を起こしたらおそらくはこのブログが取り上げられるのだろう。

容疑者は以前から、このような文章をインターネットに投稿しており・・・・・・

みたいな感じで放送されてしまうのである。

世知辛い世の中である。


● 異界系の作品が好き

勝手に「異界系」と読んでるジャンルがある。

歌でも小説でも絵画でも良いのだけれども、なんというか現実とあの世が繋がってしまうっ世界観の作品が好きである。

たとえば、ハンバートハンバートの「からたちの木」という歌がそうだ。

からたちの木が花をつけると、村の子供が一人消える。

そして、その後に草版が実を結ぶという歌だ。



♪からたちの木に花がさいた 隣の娘が身ごもった

♪生まれた子供はすぐ死んで 庭のいちじくが実をつけた


もう世界観がヤバイ。病んでる。

どうも病んでる世界観が好きで、絵画ならベクシンスキーがぐっと来る。


「病んでる」感じが重要なので、ホラーが好きなわけではない。

ホラーはむしろ苦手で、バイオハザードもダメだし、リングも貞子もダメである。

中学生のころ、ゾンビが出てくる小説を何気なく読んだら1週間ぶっ続けでゾンビに襲われる夢を見て、熱を出したことがあった。

いくら多感な時期でも、さすがに繊細すぎだろうという話である。

当時柔道で63kgの中学2年生が、ちょろっとゾンビ小説を読んだら38度9分の熱である。

邪気眼ってレベルじゃねーぞという話である。

ちなみに金曜ロードショウを見ていたら、次回予告でリングがすこし放送されてそのときも三日くらい眠れなかった。

そのとき、高校生だった私はお風呂に入るときはバスタイムが恐怖の時間に変わったので、極力鼻歌を歌ってテンションを上げながらシャワーを浴びたものだった。

どうも怖い映像や文章を目にすると、自分の想像力が勝手に暴発してそれ以上の「恐怖」を鮮明に描き出してしまう。

もしかしたら、ホラー作家の素養があるのかもしれないけれども、自分でそんな文章を書いたら恐怖でリアルに死にそうである。

ちなみに、今もリングのことを思い出しながら文章を書いてるので、割と後ろを気にしながら文章をしたためている。

幸いにもXVIDEOをバックグラウンドミュージックにしながら文章を書いているのであまり恐怖は無い。

むしろ、シュールである。

XVIDEOから女性が貞子のように出てくるなら本望である。

おそらく呪いのアダルトビデオを見た斎藤の死因は腹上死になるのであろう。

そんな死に方が一番ホラーである。