そんなにいい話でもない
仕事の準備は先手必勝だと思っている。事務作業がどんどん苦痛になってきているんだが、他人に仕事をやってもらうための手間なら嬉々として取り組んじゃっているところを見ると、我ながら性格悪いなぁ…と呆れる。本当にすみません。今日もお客様の会社訪問前に、今まで資料として頂いていたエクセルの改善を大急ぎで施した。消費税の軽減税率の処理負担をお客様側にお願いするためだ。どうせお客様は会計事務所のために資料を作らねばならない。そうであれば、会計事務所の入力の効率化が1番追求できている書式で作成してもらえればありがたいに決まっている。だから先に書式を作って「複数税率になっちゃいましたもんね~。 面倒ですよね~。 複数税率にも対応するように、新しい書式で 作っておきました! もし良かったら、使って下さい!」などと、さも「お客様ファースト」風にしれっとエクセルデータを渡せば手間が増えたのは、会計事務所が横着しようとしたからではなく、国が複数税率なんざ導入したからだ!になる筈だ。 (多分)こうやって新しことの対応は前もってやる努力をしているのだが、昔から惰性で続いている作業となるとそうもうまくいかない。今年も年末調整の時期になった。私はこの時期、お客様の従業員のために年末調整の書類を全てコピーし、一人ずつ分をセットしてお渡ししてきた。それはとても親切な行為だと思うし、お客様からすれば手間が省けてありがたいことこの上ない筈だ。かれこれ10年ほど、この方法を続けてきたけれど、今日、ふいに、PDFで渡してお客様に印刷してもらってお客様にセットしてもらってお客様ご自身に従業員へ渡してもらう方法に変えれないかなぁ…と勝手なことを思いついた。物理的に手が回らなくなってきたのだ。例えば従業員が30人の会社であれば、お客様側の手間は30人分で済むけれど、仮に私に顧問先が20社あるとしたら、私は30人×20社=600人分を作成しなくてはならないことになる。600人分も作るから自分の作業をお客様には【是非】ありがたがって頂きたい!と思ってしまうのだが、断言しよう。実際、これをありがたがっているお客様などいやしない。昨日、顧問料アップの話をしたが、実はあれには裏話がある。私は社長の前に自分の顧問先の1時間当たりの報酬額を計算した表を広げ、実は御社がダントツ低かった、という趣旨の話をした。おもむろにその表を伏せ、「ところで社長、私の時給、いくらぐらいだと思いますか?」と問いかけてみた。明らかに、「このオンナ、時給×従事時間でうちの顧問料査定を 行おうとしているな!」と察知し、そして、恐らく数値もちらりと見えていたのだろう。あろうことか「3,000円?」と言ってきたのだ。実はその瞬間、私は自分の希望価格の満額請求を決めた。キジも鳴かずば撃たれまい。小学校で習ったことわざが脳内に響き渡った。狩人と化した私は、そこから怒涛の説得工作に入る。だから顧問料アップは、私の今までの仕事ぶりが手放しで評価された訳ではない(苦笑)。なぜこの話を出したか、というと恐らく「年末調整の書類、PDFにしちゃおっかな」というアイデアはこのキジ社長の発言が念頭にあってのことだからだ。誤解のないように申し上げると、実際、この社長がお支払くださる金額は他の会社と比べても法外な時給となる訳だがそのことを理解した上で、社長は私の提案をあっさりのんでくださった。非常に懐の深い方だと思っている。恐らく3000円と言ったのを悪かったと思われたのか、「いや、うちの業務は手間がかかってるから、 それぐらいになっちゃってるのかな…と 思ったんだよね…」などとフォローもくださった。私が一番にこの社長に顧問料アップの打診をしたのはこの社長なら分かって下さる、という私の側の甘えがあった。それなりの人間関係も築いているし、なによりある程度の評価を頂いている、という自負があった。だからこそ余計に、3000円発言を重く受け止め、大いに反省すると同時に自身の仕事の仕方を変える必要性を感じたのだ。今までやっていた業務のレベルを下げるのは本当はあまり好ましくないことだと思う。けれど冷静に考えてみてこの事務作業をお客様は本当に心から評価してくれているのだろうか?と疑問に思ったのだ。どんなに事務作業を完璧にしたとしても、お客様の評価は上がらない。もちろんその事務作業がいい加減だとお客様の評価は一気に下がるので、事務作業の重要性を否定するものでは無いのだけれど、事務作業を必死に行うことで自身の認知能力がそがれ真に対応すべき事柄が後回しになっている現状を見ると事務作業の軽減を決心せざるを得ないのも事実である。お客様の状態を見て、長い目で見たら、こういう対策をうっておいた方がいいのに…と思うことがあっても、それは今すぐやらねばならないことではないし、やらなくても時は何食わぬ顔をして通り過ぎてくれるものだからしれっと気づきませんでした風にやり過ごすことだって出来る。明日やろう、明日やろう、と言い続けるもその明日は永遠に来ない、なんてこともある。お客様は素人だから、すぐには気づかないかもしれない。けれど、私はやり過ごしてしまっていることを知っていて、どんどん自己嫌悪に陥って、だんだんやる気もそがれ、得体のしれない疲れだけを背負ってきた。税理士はお客様に雇われている身だと定義するか、お客様と一緒に、お客様の幸せをもっとも効率的に追求しようと働くパートナーだと定義するか、で考え方は違ってくる。パートナーというのは、二人で力を合わせて協力して何事かをなそうとする者たちのことを指すのではなかろうか?とするならば、一方だけが全ての業務を担う必要はないのではなかろうか?とはいえ、夫婦間の家事問題同様、一方的にどちらかだけに負担が偏るのはトラブルの元かもしれないが、得意なものがより多くやって済むのであればそれでいい訳で、事務作業が明らかに不得手なお客様にまでその負担を無理強いするのは得策ではない。だからすべて一律にルール化することはできないし、する必要もない。けれど少しずつ、自分の働き方を見直す時が来ているのは事実だ。私は強欲な人間だ。目の前にやってくるものは何でも掴みたいと思っているし、一度掴んだものは、手放すのが惜しくてガシッと握りしめている。それが幸せならそれでいいのだけれどそろそろほころびが目立つようになってきた。明らかに限界に来ている。声高に理想を叫んでも、立派な御託を並べても、現実は何も変わらない。表面を繕えば繕うほどに恥ずかしさと情けなさで自分の首はどんどんしまっていくばかり。偉そうなことなど何一つ言えなくてもいいから自分のやっている仕事に価値を見出していたい。私に委ねてくれた善意の人々を裏切りたくはない。そう思うのなら、自分で動き出さねばならない。燕の子のように口をあんぐり開けていても誰も何ももたらしてはくれない。これは私がやらねばならない領域だからだ。ということで、業務連絡。私のお客様へ:今年から、原則、年末調整の書類はPDFで送ります。ちゃんと名前や住所は入ってるので入力が間違ってないかも各従業員にチェックするようお伝えくださいませね。