A-5 新問

マルチパスの影響を受けた信号波の振幅と位相の変化に関する原理的な新問です。解いて行くには一捻りが必要なので後回しにしてよい問題だと思います。

 

A 求めるべき合成波の振幅(A)を計算だけで導き出すのは難しそうだということは分かると思います。それでは①式をよく見てみましょう。

上式の様に書き換えてみると希望波Si(t)、遅延波Sr(t) と合成波Acos(2πft-φ)は振幅はすべて異なるものの、それぞれの周波数fは同じであり、位相だけがずれていることが分かります。従ってSi(t)=cos2πftを基準(2πft=0、このときSi(t)=cos2πft=1)としてSr(t)=rcos{2πft-(2πftd-θ)}を極座標で表してみると

 

上図のようになり、Si(t)は極座標表示でP0(1,0)、Sr(t)は極座標表示でP1(r,-(2πftd-θ))と表すことができます。Si(t)+Sr(t)はこれらのベクトルの和で求めることができるので図中の灰色のベクトルとなり、その大きさは三平方の定理を用いて

と計算できます。また、この灰色ベクトルと基準ベクトルP0(1,0)のなす角φは

であるので

となります。

 

B 上で求めた合成波の振幅Aは

です。ここで

なので

①r≧0のとき

 cos(2πftdーθ)=-1で最小値

 cos(2πftdーθ)=1で最大値

をとります。

②r<0のとき

 cos(2πftdーθ)=1で最小値

 cos(2πftdーθ)=-1で最大値

をとります。

従って合成波の最大値/最小値は

で表すことができます。

 

C 上式においてr≧0のときを考えてみましょう。このとき最大値を取るのはcos(2πftdーθ)=1のとき、すなわち2πftdーθ=2nπ(n=0,1,2,3...)を満たすときです。問題文に与えられた合成波の周波数特性の図において、最初に最大値をとる周波数f0(n=0)、次に最大値をとる周波数f1(n=1)と仮定すると

f0およびf1

となります。ここで求める周期fr=f1ーf0なので

と求められます。

お疲れ様でした。