A-1 類似過去問あり(令和4年1月期2回目 FA402 B-5) 

過去問は以下の通り。

 

第4世代移動通信システム(4G)で利用されるLTE-Advance方式の上りリンクに使われるSC-FDMAに関する問題で、令和4年1月期FA402 B-5に類似問題が出題されており覚えていれば穴埋めは簡単だったかもしれない。第3.9世代(Super 3G)で用いられたLTE(Long Term Evolution)よりも高速・大容量に対応した規格であるが下位互換性を保っているので基本的なフレーム構成などは同じになる。このLTEのフレーム構成については令和3年7月期FA307 A-1や令和5年1月期FA502 A-3で出題されているので合わせて復習しておこう。

 

LTE方式では基地局と携帯端末間の多重通信という環境において基地局からの下りリンクではOFDMA、携帯端末からの上りリンクではSC-FDMAが用いられるという特徴がある。OFDMA(orthogonal frequency division multiple access:直交周波数分割多元接続)はOFDMを周波数領域でも多重化したものであり、OFDM同様に

 

 

サブキャリア間隔を狭めることで帯域を有効活用できることやシンボル・レートを低く(シンボル長を長く)することによる耐マルチパス性能の向上が得られるという利点があるが、一方でマルチキャリア信号となることからピーク電力対平均電力比 PAPR(Peak to Average Power Ratio)が高くなる*という欠点を持ち合わせている。

*マルチキャリア信号は複数のサブキャリアが合成されたものであり、各サブキャリアの振幅と位相はデジタル変調では独立にランダムな値となるため、各サブキャリアの時間波形を総和した送信波形においては時に非常に大きな振幅すなわちピーク電力を有することがある。

 

PAPRが高いと電力増幅器の非線形歪みによる影響を受けやすくなるため、電力増幅器の線形領域のみを用いて送信しなくてならないがそうすると電力効率が極端に低下する。基地局であれば許容できる電力効率の低さも携帯端末では無視できないため、携帯端末からの上りリンクではPAPRを低くすることが可能なSC-FDMA(single carrier-frequency division multiple access)が用いられている。このSC-FDMA信号はOFDM送信システムのIFFT(逆高速フーリエ変換)の前にDFT(離散フーリエ変換)を設置した回路によって生成される。入力されたMシンボルの時間領域信号はM point DFTによって周波数領域信号に変換され、これをOFDM同様にIFFT処理することで再度時間領域信号に変換している。

 

 

DFT処理により変換された周波数領域信号(サブキャリア)には元のMシンボルの時間領域信号の全てのシンボルの情報が含まれる形となり、これによって得られる波形はOFDM(A)のような個々の独立したサブキャリアの合成ではなく、シングルキャリアの性質を引き継いだ波形となる。

 

 

なお、元のシンボルデータはDFT処理によって周波数領域に拡散されることになるので、一つのサブキャリアにマッピングされたシンボル情報だけでは元のシンボルデータを取り出すことはできず、送信帯域全てのサブキャリアに含まれるシンボル情報が必要であることに注意が必要である。

 

このようにSC-FDMAでは出力がシングルキャリアの性質を有しており、各サブキャリアが複数シンボルの情報を含んでいることからシンボルのエネルギーが分散された形となるためPARPを低く抑えることができる。

 

さて、LTE方式における無線リソースの割り当てにはRB(Resource Block)と呼ばれる単位が使われているが、周波数方向には12本のサブキャリア(キャリア間隔:15 kHz)、時間方向には7つのシンボルで構成される。

 

 

LTEでは2つの連続するRBが1サブフレーム(subframe)として周波数割り当ておよび送受信切り替えの最小単位として用いられるが、下りリンクでは基地局から送信される下りリンク参照信号(Downlink Reference Signal)をユーザー側(携帯端末)で受信しその受信品質をチャンネル品質指標(Channel Quality Indicator)として基地局に報告することで基地局は各ユーザーに受信品質の高い周波数を割り当てることが可能となり周波数利用効率を向上させることができる。

なおLTEではシステムの帯域幅が変わってもサブキャリアの間隔は変わらない(サブキャリア数が変わる)「スケーラブルOFDM」が採用されており異なる周波数帯域幅を持つシステムが混在する環境への対応が容易になっている。

 

【筆者注】SC-FDMAについてはいまだに完全に理解できておらず不正確な記述が含まれているかも知れませんが、一陸技の試験問題を解くという観点からは概ね上述した内容で理解していただければ充分かと考えています。間違いやお気づきの点などご指摘いただけますと幸甚です。