A-1過去問数値違い FK307 A-8)いろいろな形で頻出される皮相電力・有効電力・無効電力・力率の関係を問う問題です。

それでは解いていきましょう。

一般的なお約束ですが、それぞれの負荷に共通となる電圧Vの位相を基準に考えるため、V(の位相)を実数軸に一致させます。そうすると、誘導性負荷Lに流れる電流はV/jωL=-j(V/ωL)で表されるため、このグラフでは虚数軸のーj方向に描かれることになります。

 

①負荷Z1について考える(緑色)

負荷Z1に流れる電流I1、I1とVのなす角αとすると有効電力P1

P1=V×I1×cosα

で表される。ここで題意よりV=100[V]、力率=cosα=0.8、有効電力800[W]であるから代入するとI1=10[A]が得られる。このときI1の実数軸成分はI1cosα=0.8I1=8Aである。またI1とI1cosαを2辺とする直角三角形に着目すると、各辺の長さが3:4:5であることがわかる。従ってI1の-j軸成分は0.6I1=6Aである。

 

②負荷Z2について考える(橙色)

負荷Z2に流れる電流I2、I2とVのなす角βとすると有効電力P2

P2=V×I2×cosβ

で表される。ここで題意よりV=100[V]、力率=cosα=0.6、有効電力600[W]であるから代入するとI2=10[A]が得られる。このときI1の実数軸成分はI2cosβ=0.6I2=6Aである。またI2とI2cosβを2辺とする直角三角形に着目すると、各辺の長さが3:4:5であることがわかる。従ってI2の-j軸成分は0.8I2=8Aである。

 

③負荷全体での電流と力率を考える(赤色)

各負荷の実数軸成分と-j軸成分の電流を合計し、そのベクトルの和を求める。

実数軸成分 0.8I1+0.6I2=8+6=14[A]

-j軸成分 0.6I1+0.8I2=6+8=14[A]

従って図のように求める負荷全体の電流は1:1:√2の直角二等辺三角形の斜辺部分に相当するから、電流の大きさは14√2[A]であり皮相電力は100×14√2=1400√2[W]となる。このときの力率は1/√2(=cos45°)である。

 

A-7過去問ほぼ同じ FK408 A-6など)直列共振回路の基本的な問題です。

直列共振回路において共振状態のときは、コイル両端の電圧VLとコンデンサ両端の電圧Vcはその大きさが等しく、向きは逆である。従ってVLc=VL+Vc=0である(選択肢2:正しい)。このとき抵抗両端の電圧VRは電源電圧Vと等しい。またコイルのQとは、直列共振回路において共振状態でコイル(またはコンデンサ)にかかる電圧が抵抗にかかる電圧の何倍になるかで表される指標である(並列共振回路ではコイル(またはコンデンサ)に流れる電流が抵抗に流れる電流の何倍になるか)。従って

であり、

となる(選択肢1:誤り)

 

回路の電圧・電流の位相を考えるときは回路が誘導性か容量性のどちらに属するかで考える。直列共振回路ではコイル・コンデンサに流れる電流は同じであるから、どちらの電圧が大きいかで判断する(VL>Vcのとき誘導性、VL<Vcのとき容量性)。角周波数ωが小さくなるとコイルのリアクタンスωLは小さくなりコンデンサのリアクタンス1/ωCは大きくなるからそれぞれに掛かる電圧もコイルで低く、コンデンサで高くなる。この状態を「容量性」という。反対に角周波数ωが大きくなるとリアクタンスωLは大きくなりコンデンサのリアクタンス1/ωCは小さくなるからそれぞれに掛かる電圧はコイルで高く、コンデンサで低くなる。この状態を「誘導性」という。

 

①ω1のときは角周波数が小さくなると考えると回路は「容量性」となる。すなわちコンデンサが優位となるので、電圧に対して電流が進む

②ω2では角周波数が高くなると考えると回路は「誘導性」となり、コイル優位で電圧に対して電流は遅れる

(選択肢3:誤り)

 

上のQの式から

(共振時はω=1/√LC)

従って

(選択肢4:誤り)

 

Qの定義は

である(選択肢5:誤り)

 

A-8新問類似 FK212 A-6、FK007 A-19など

CR並列+L直列の電流の位相を問う問題は平成20年以降には見当たりませんでした。計算問題ですが、難しくはありません。

(1)CR並列部分のインピーダンスをXとすると

と計算できる。

(2)上式の虚数項が0になるから

(3)虚数項が0であるからZは

となるから、(2)の結果と合わせて流れる電流Irは

 

A-9(新問扱い)(超古い(H23年)過去問同じ FK 301 A-9)

平成23年1月期A-9の問題も上げておきます。

これは常識的に考えても答えが導き出せる問題でした。

Rth=ΔT/P

まずコレクタ接合部の温度と周囲の温度差ΔTが大きいということは、トランジスタの熱が周囲に伝わりづらく冷却されないということなので、ΔTが大きい=熱抵抗も大きいと考えてΔTは分子にくることが分かります。一方で(熱抵抗が)同じ放熱板を使用して2つのトランジスタの比較をした場合、消費電力Pが大きいほうが発熱量も大きくなるので、結果的にΔTも大きくなって見かけ上の熱抵抗が上昇することになり矛盾が生じます。従って熱抵抗は発熱量を一定にした状態で比較しなくてはならず、一般的には単位電力あたりの値で考えます。従って消費電力Pで割った値になります。

 

放熱板を取り付けると冷却効果が高くなるので熱抵抗は小さくなります。

 

A-10過去問同じ FK201 A-11 類似 FK302 A-12)

回路図から「Nチャンネル接合形」のFETであることが分かります(選択肢1・4は正しい)。従って構造はチャンネルがN形半導体となる図2の「I」の構造となります(選択肢5が誤り)。Nチャンネル接合形FETでは通常Vgsが負の領域で使用するのでGS間の電圧の極性は「Gが負、Sが正」(選択肢2は正しい)となり、ドレイン・ソース(DS)間は「Dに正、Sが負」(選択肢3は正しい)となります。

 

【おまけ】

接合形FETではNチャンネル形は構造上のチャンネルもN形半導体(Pチャンネル形はP半導体)となります。一方でMOS FETではNチャンネル形は構造上P型半導体の中に、ゲートに加えられる電圧により酸化膜(絶縁膜)を通して静電誘導される電子がチャンネルを形成するので、物理的構造は接合形とは反対のように見えます。