今回(令和3年12月期)無線工学A-21出題の平衡-不平衡変換について掘り下げて考えてみましょう。

 

1 不平衡型である同軸ケーブルと平衡型の半波長ダイポールアンテナを接続すると何か問題があるのだろうか?

 不平衡型である同軸ケーブルと平衡型の半波長ダイポールアンテナを接続すると同軸ケーブルの外部導体に漏れ電流が流れ、ここから電波が放射される。本来ならすべてアンテナから放射されるはずの出力に放射損失が生じることになる。これが問題。

 

2 漏れ電流を防ぐにはどうする?

 この漏れ電流を解消するために平衡ー不平衡変換回路(整合回路)を用いるが、これをバランという。バランには①集中定数型バラン②分布定数型バラン③広帯域トランス型バランがあり、このうち①と②は単一周波数帯での使用となり、③はその名のとおり広帯域で使用できる。この他④シュペルトップ(阻止筒管)も漏れ電流を解消する手段としてあげられる。

 

①集中定数型バラン

 LCを用いた回路で、1次側と2次側それぞれ共振させると整合させることができる。

(この形のバランについては一陸技でも出題されたことがないので1アマでは覚えなくて良いと思います)

 

②分布定数型バラン(U型バラン)

同軸線路の終端にλ/2の迂回路(U型部分)を設けて、平衡線路側の出力の位相が180°異なるようにすると、出力はVと-Vになり、端子間電圧は2Vが得られる。このとき同軸線路側に流れる電流Iは平衡線路と迂回路に流れ2分されるので平衡線路の電流はI/2になる。従って平衡線路側のインピーダンスR=2V/(I/2)=4Z0となる。

(このバランは一陸技でも出題されており、余裕があれば1アマでも覚えておいたほうが良いかも知れない)

 

③広帯域トランス型バラン

①②と違い共振させずに使用するので広い周波数帯域で使用できるのでアマチュアではよく用いられる。

L1・L2・L3の巻数を同じとすると送信機側の電圧Vに対してL1およびL2両端の電圧はV/2となり、同じ巻数のL3にもV/2が誘導されアンテナ側にも(V/2)+(V/2)=Vの電圧が得られる。ちなみに電圧の向きが重要なのでこのトランスを作成するときは「トリファイラ巻き」という巻き方を用いる。

 

④シュペルトップ(阻止筒管

同軸線路末端にλ/4波長の筒管をかぶせて受端短絡λ/4共振回路を形成すると開放端から見たインピーダンスは∞となるため漏れ電流が流れない。

ちなみに受端短絡線路のインピーダンスについては過去問の「同軸トラップ」の解説に詳しく説明されているので参照されたし。