その揺れは突然やってきた・・・
正確な時刻は忘れてしまったが2時から3時の間ぐらいだろうか
俺は遅めの昼食をとる為に、行き付けのコンビニがある交差点で信号待ちをしていた
すると突然、車が揺れ出したのだ
一瞬、強風に煽られているのだと思ったのだが、その揺れは一定の強さを保ちながら続いている
まさか・・・地震か!?
信号が青に変わり車の列が進み始める
その列から外れコンビニの駐車場に車を入れた瞬間、一定の強さを保ちながら続いていた揺れが一気に激しさを増した
今までの人生の中で感じたことのない最大級の揺れだ
コンビニの中からは立て続けに人が飛び出してくる
顔見知りの多い店なので、俺は車を降りて念の為に店内を覗き込んだ
店内は停電の為に電気が消え、品物が床に散乱してはいたが、どうやら怪我人は居ないようだ
最低限の確認を済ませた俺は車に戻り、行き先を自宅に変更し車を走らせた
自宅に戻る途中の小さな食品工場の前では、白い衛星服姿の従業員の集団が外に非難していた
不安そうに工場を見つめるその集団を横目に裏路地に入ると、石塀が道路に崩れ落ちている
やはりあの瞬間、そうとうな揺れを記録したはずだ・・・
我が家は古い作りの木造住宅なので、崩壊していても何ら不思議はない
こんな時の携帯電話など何の役にも立たないので、我が家へ向けてアクセルを踏み込んだ
我が家へと続く曲がり角、その手前の石塀までもが崩れ落ちていて道路の半分を埋めている
石塀の残骸を避け曲がり角を曲がる
すると家の脇の道路でかがみ込む両親の姿が目に付いた・・・
まさか!?
そう思った瞬間、俺の車に気付いた両親は何事もなかったかのように立ちあがった
よくよく見てみれば、我が家の庭に立てられていた石灯籠の一部が塀を乗り越えて、隣接する道路の中央部分まで飛び出していたのだ
それを道路脇に寄せようとかがみ込んでいただけらしい
そいつを片付けながら家の被害を聞いてみると、今のところ決定的な被害は出ていないと言う
ひとまずはホッとした思い
近所の人たちも外に非難していたので被害状況を聞いてみると、家の中の物が散乱している他に、瓦屋根や石塀の損壊が一番多いと言う
その話を聞き家の中に入ってみると・・・成る程、こりゃ酷い
棚に収まっていた物の殆んどが床に散乱、もちろん割れ物の類は床の上で粉々に割れている
水槽の水は揺れによって外に飛び出し、水槽周りの床は水浸しになっていた
それらを片付けようとしても、ひっきりなしに震度3前後の余震にみまわれる為に片付けもままならない・・・
余震が来るたびに外に出て、おさまれば中に入るの繰り返しだ
やっとのことで最低限の片付けを済ませ、夜に向けての準備に入る
ガスや水道が生きているのは確認済みなので、水や食料に困ることは無いだろう
我が家は兼業農家なので米の蓄えは充分にあるし、電気式の物とは別にガス式の炊飯器もある
他に必要な物と言ったら、暖房と明かりだろうか
電気に関しては復旧のメドがたっていないと、嫌と言うほどラジオに聞かされているのでロウソクと懐中電灯を用意した
暖房は石油ストーブをガレージから引っ張り出して対処するとしよう
あとはもう・・・最大級の揺れが再びおきぬように祈るばかりだ
倒れた石灯籠
瓦屋根が一部崩れてしまった隣の住宅(我が家の瓦屋根もこんな感じで崩れてしまっている)
ゲージごと外に非難したミーコ、本能的に恐怖を感じているのか強張った表情のまま、ずっと全身の毛を逆立てたままだった
この数時間後・・・
東北地方の被害映像を見て、俺は愕然となった・・・
津波に呑込まれる海岸沿いの街・・・
津波がひいた後の無残な姿・・・
ラジオから流れる情報で気にはなっていたのだが、まさかこれ程とは思っていなかった・・・
東北地方の方々の被害に比べたら、我が家の被害など微々たるもの
それなのに一瞬とは言え右往左往した自分が恥ずかしい・・・
ご家族や友人や知人を失ってしまった方々に、かける言葉が見つかりません
ただ一つだけ、こんなことを言えた義理じゃ御座いませんが言わせてください
失ってしまった方達の分まで、命ある方は生きて下さい
辛く悲しくても、どうか生きて下さい
この想いと共に、今回の地震で命を奪われてしまった方々のご冥福をお祈り致します


