もう10年も前の話になるのだろうか・・・
当時の俺は建設現場で働いていた
一戸建てやアパートの基礎を作る仕事である。
そこで知り合ったのが、モハンと言う名のスリランカ人
仕事に真面目で、気の良い男だった。
初めは別々の現場に出ていたのだが
モハンと組ませてくれと、俺から社長に直訴した。
何故なら、モハンとなら良い仕事が出来ると思ったからだ。
それまでは鉄骨の基礎が中心だったのだが
モハンと組んで木造の基礎も手掛けるようになった。
2人で組んで手掛けた現場は完璧
まさに最強のコンビだ。
しかし半年後には、その最強コンビが解消されることとなる・・・
喧嘩か? いや違う。
そりゃあ、お互いの意見が合わなくて喧嘩もした事はあったけど
喧嘩の原因は全て、仕事のこと・・・
プライベートな喧嘩は1度もない。
最強コンビ解消の理由は、現場が増えたからに他ならない
モハンが鉄骨の基礎をまとめ、俺が木造の基礎をまとめる・・・
その構図が、現場が増えた事によって出来上がってしまったからだった。
そんなある日のこと、同じ現場で顔を合わせる2人
久々に最強コンビ復活である!
あーだ、こーだと くっちゃべりながらも仕事をこなし
現場で余った土を運んでる途中で事件は起きた。
憎たらしいにも程がある、国家権力の登場である!
いや、正確には国家権力が憎たらしいのではない・・・
そこに属する、1匹の犬が憎たらしいのだ!
スピード違反の取り締まりの連中が、何故か俺たちの乗るダンプを止めた
その瞬間、ヤバイなと思った。
スピード自体に問題は無いのだが・・・
何を隠そうこのモハン、いわゆる不法滞在者なのである。
案の定ビザ切れを指摘され、車外へと出されるモハン・・・
まぁ、でも、免許証自体に問題は無いし相手は交通課
ビザが切れているからといって、よっぽどの事がない限り
この場で連行される事はないのである。
そこはモハンも心得たもので、若めの警察官の話を大人しく聞いている
大人しく聞いてはいるのだけれども・・・
若めの警察官が、尋常じゃない大声でモハンを怒鳴りつけているのである。
「てめぇ!早くかえれよ!ああ!?わかってんのか?早く帰れって言ってんだよ!!」
これが・・・無抵抗の人間に向かって浴びせる言葉だろうか?
勿論モハンは、言葉による抵抗さえもしていないのにだ・・・。
時間にして5分位の間だろうか?モハンに対して怒鳴り散らしていた警察官・・・
いや、あえてこう呼ぼう、1匹の犬が俺の元へと近寄ってきた
そいつのニヤケた顔を見た瞬間、俺はその犬に罵声を浴びせていた。
「てめぇ何様だよ、コノ野郎! なんだ?さっきの態度は!? ああ!? あれが警察官の仕事かゴルァ! 同じ人間だろうがよ! 分かってんのかコノ野郎!! てめぇこそ分かってんのかよコノ野郎!!」
年輩の警察官に止められるまで、若めの警察官もとい若めの犬に向かって怒鳴り散らかす俺。
どっちもどっちだと思われるかもしれないが、俺は間違った事は言ってはいない
きっとモハンなら、俺の気持ちを理解しているはずだ。
モハンを助手席に乗せ、その場を立ち去った車内でモハンが俺にこう言った・・・
「ねぇ? アナタなんで怒ったの?」
へ? 今なんて?
どうやらモハンには・・・
警察官を怒鳴りつけた俺が、ただの馬鹿にしか思えなかったみたいだ![]()
