”しかし、それは何だか免疫に関する一般論から逸脱したメカニズムのように見えて”

 

免疫システムが十分に働かないほうがコロナに感染しない?

 

米エポックタイムズに、なぜ一部の人がCOVID-19に感染しないのかが初めて説明されるというタイトルの記事がありました。

 

つい数日前に科学誌ネイチャーに発表された論文を紹介しているのですが、要するに、一部の人はコロナに感染して(発症するかどうかは別として「感染」)、一部の人は、発症どころか「感染自体しない」というような差はどこにあるのかというのを研究したものです。

 

この研究がまた、コロナの研究では、初めてとなるのだと思いますが、

 

「被験者に意図的にコロナウイルスを曝露させる」

 

という「人体感染実験」なんですね。

 

なかなか大胆な研究ですが、それはともかく、どうも記事を読んでいますと、いろいろと不思議な感想を持ったのです。

 

読めば読むほど、全身の免疫応答が正しく起こらない人のほうが、コロナに感染しにくいというように読めるのです。

 

私は今でも感染症に関して素人ですので、勘違いしているのかもしれないですが、それほど長い記事ではないですので、先にご紹介させていただこうと思います。

 

なお、被験者は、全員 30歳未満で、基礎疾患等はなく、全員がワクチン未接種で、コロナ感染歴もない人たちです。

 

太字はこちらでしています。

 

 


【初の研究で、なぜ一部の人がCOVID-19に感染しないのかが説明される】

First-of-Its-Kind Study Explains Why Some People Don’t Get COVID-19
Epoch Times 2024/06/19

 

鼻腔内でSARS-CoV-2ウイルスにさらされても、免疫反応がより速く、またはより免疫応答がわずかな人たちは感染しなかった。

 

 

研究者たちが、鼻腔が COVID-19 ウイルスにさらされた後でも、一部の人々がウイルスに感染しない理由を発見した。

 

最近の研究によると、これらの人々は、症状のある COVID-19 を発症した人々よりも免疫反応が速く、そして、免疫反応がよりわずかだという。

 

「これらの研究結果は、症状が現れる前にウイルスが定着するか急速に排除されるかを決める重要な初期段階の出来事に新たな光を当てている」と、研究論文の主任著者でロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの呼吸器医学名誉顧問であるマルコ・ニコリッチ博士はプレスリリースで述べた。

 

6月16日にネイチャー誌に掲載されたこの研究は、英国とオランダの研究者たちが実施したヒトへの感染実験だ。参加者たちが COVID-19 を引き起こすウイルスである SARS-CoV-2 に意図的にさらされる実験として初めてのものだ。

 

研究者たちは、この研究のために 30歳未満の若く健康な参加者 16人を募集した。参加者には併存疾患はなく、これまでに COVID-19 に感染したこともワクチン接種を受けたこともなかった。

 

 

3つの異なる免疫反応

 

16人はウイルスへの曝露に対してそれぞれ異なる反応を示し、それに応じてグループ分けされた。

 

2番目のグループの人々は無症状であったが、PCR 検査で COVID-19 の陽性反応が出た。これらの参加者は一時的感染と分類された。

 

3番目のタイプの人々は無症状で、COVID-19 の PCR 検査結果が継続的に陰性であった。著者たちは、これらの参加者は感染していたが、感染が急速に治ったため、感染は「中途半端」と名付けられたことを確認した。

 

著者たちによると、無症状の COVID-19 に感染していた第 2および第 3のグループは、より速い、またはよりわずかな免疫反応を示した。

 

1日目に、著者たちは無症状のグループにおいて感染部位である鼻に移動した免疫細胞を検出した。

 

しかし、COVID-19 の検査で陰性だった人たちは、より少ない種類の免疫細胞を集めたのに対し、COVID-19 陽性のグループはすべての種類の免疫細胞を集めた

COVID-19 感染が持続し症状のある人たちは、免疫反応がより遅く、より体系的だった。これらの参加者は、1日目ではなく 5日目にすべての種類の免疫細胞が鼻腔内に流入した。

 

 

遺伝的要因

 

HLA-DQA2 (ヒト白血球抗原遺伝子の 1つ)などの特定の遺伝子の発現が高い人は「持続的なウイルス感染の発症を防ぐのに優れている」と著者たちは書いている。

 

他の研究では、血液中の HLA-DQA2 の活性の増加が COVID-19 の進行の軽度化と関連していることが示されている。

 

HLA-DQA2 は、数あるヒト白血球抗原 (HLA) 遺伝子の 1つだ。HLA 遺伝子は、細胞表面に表示されるタンパク質を生成する。

 

病原体が細胞に感染すると、HLA タンパク質は、感染したことを免疫細胞に知らせる。

 

著者たちは、HLA-DQA2 の活性が感染細胞における SARS-CoV-2 ウイルスのさらなる生成を防ぐことをデータで確認したと述べた。

 

 

症状のある人は体系的な反応を示した

 

COVID-19 の症状がある人だけが、全身的なインターフェロン反応を示した。インターフェロンは免疫系のメッセンジャーであり、免疫や炎症の活動を軽減または悪化させるのに役立つ。

 

著者たちは、血液中のインターフェロンが感染部位のインターフェロンよりも先に活性化されたことに驚いた。血液中のインターフェロン活性は感染 3日目にピークに達したが、感染部位である鼻でのインターフェロン活性は 5日目まで検出されなかった。

 

プレスリリースの中で、著者たちは、鼻の免疫反応が遅いために感染が急速に広がった可能性があると述べた。

 

無症状の人たちには全身性インターフェロン反応がなく、感染細胞が存在することもほとんどなかった。

 

予想通り、「感染細胞は症状のある人の鼻腔にほぼ独占的に見つかった」と著者たちは記している。被験者の鼻腔の内側を覆う細胞が SARS-CoV-2 ウイルスを産生し始め、ウイルス量の増加に寄与する。

 

「私たちは現在、免疫反応の全範囲についてより深く理解しており、それがこれらの自然な防御反応を模倣する潜在的な治療法やワクチンを開発するための基礎となる可能性がある」とニコリッチ博士は述べた。

 


 

 

ここまでです。

 

でも、この研究は、「ワクチンを接種していない人」だけで行われた研究ですけど、ワクチンを接種した人たちもグループに加えてほしかった気もします。

 

接種した人たちの場合、抗原原罪とか免役寛容とか表現はともかくとして、コロナウイルスに対しての免疫応答が非常に弱くなっている場合が多いと思いますので、そういう人たちの身体の免疫システムの反応も知ってみたかったですね。

 

それはいいとして、私などの理解ですと、病原菌に感染した際には、インターフェロンなどの働きは、「できるだけ速く」、そして「できるだけ全身で」起きたほうが、病気とよく戦っているイメージがあったのですが、この研究の場合、

 

・無症状の人たちには全身性インターフェロン反応がなく…

 

とか、

 

・COVID-19 の症状がある人だけが、全身的なインターフェロン反応を示した

 

などを読みますと、コロナの場合、全身的なインターフェロン反応がないほうがいいということなんですかね。

 

インターフェロンというのは、以下のようなもので、免疫の重要な部分です。

 

インターフェロンとは、動物体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質のこと。ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをするサイトカイン(生理活性物質の総称)の一種である。 wikipedia.org

 

「インターフェロンって何なんだろうなあ」とか思いましたけれど、私が考えたところで、何かわかるわけでもありません。

 

ただ、いつくか文献を見ていますと、ネイチャーの日本語版に「インターフェロンの作用には二面性があり、感染の防止に働く場合と、慢性感染の状態を悪化させる場合があることが明らかになった」という文言が入った 2014年の記事がありました。

 

サルにサル免疫不全ウイルスを曝露する実験の話でしたが、

 

> インターフェロンα2aをサル免疫不全ウイルス(SIV)曝露前に投与するとウイルスの全身感染が防止されたこと、また、このサルにインターフェロン受容体拮抗薬を投与すると重篤な感染症が引き起こされたこと、そしてインターフェロン投与が長期にわたると有害な影響が見られることを示した。 natureasia.com

 

とありまして、

 

・感染の防止がなされた

 

と共に、

 

・インターフェロン投与が長期にわたると有害な影響が見られる

 

ということのようで、そのようになる要因は「わかっていない」ということのようです。

 

インターフェロンを治療に導入しようとする研究は数多くなされているようですが、結局、今でも、この記事の締めの状態のままなのではないでしょうか。

 

ネイチャーより

 

自然免疫応答はいまだ未知の分野であり、インターフェロン応答においても、真のエフェクター分子群や、そうしたエフェクター分子の病原体の侵入開始時の役割、また個々のエフェクター分子の急性および慢性疾患での作用について、現在も分かっていないため、インターフェロン経路を標的とした治療のためには、インターフェロン応答の詳細な解明が欠かせない。

 

ただ、インターフェロンが誘導する複雑な抗ウイルス応答は、HIV治療においては決定的な効果が見られないことから、「多芸は無芸」ということわざに例えられるようなものである可能性も考えられる。

 

natureasia.com

 

人為的な介入は、どのようなジャンルにおいても、実際にはほとんどわかっていない人体の領域に無理矢理入りこんでいるわけで、mRNA テクノロジーもそうですけれど、結局、悪い面ばかりが後になって出てくるものなのかもしれません。

 

今回の「感染する人」「感染しない人」のメカニズムから何か予防薬や治療薬を作ろうとしても、まずは失敗しそうですが、しかし、今の世は、最終的に失敗するかどうかは関係なく薬剤は承認されることが多いですので、いろいろなものも出てくるのかもしれません。

 

ともあれ、コロナに「感染する人」「感染しない人」の違いが実に微妙な話であることに、微妙な感銘を受けた次第でありました。