”米国の牛の飼育頭数が1951年以来最低の中で、鳥インフルエンザ感染を理由とした牛の殺処分が加速中”

 

アメリカの牛の間で鳥インフルエンザの感染が拡大している(という話のもとで)農家による牛の殺処分が増加していると報じられています。

 

アメリカでは、感染症対策専門家の医師が、「全米のすべての牛のインフルエンザ検査を行うべきだ」というようなことを話していたことを以下で記事にしたことがあります。

 

(記事)メキシコで鳥インフルエンザによる死者が出たことにより、いろいろと走り出す可能性。懸念されるのはアメリカの4000万頭の「牛すべてを検査すべき」だという声…
In Deep 2024年6月6日

 

すでに、現実として、アメリカでは、鳥インフルエンザに感染した(とされた)かなりの数の牛が殺処分されていることが伝えられています。ロイターによると、正確な死亡総数はわかっていません。

 

なお、この鳥インフルエンザの話が出る前のこととして、現在のアメリカの牛の飼育頭数は、1951年以来最低となっているのだそうです。

 

以下は、1974年からのデータですが、数としては、1951年以来の最低の頭数となっているのだそう。

 

米国の牛の飼育頭数の推移

zerohedge.com

 

そして、以下は牛一頭の価格の推移で、過去 20年で最高となっています。

 


zerohedge.com

 

こういう状況の中で、飼育牛の頭数がさらに減少していくと、ただでさえ、米国で牛肉や牛乳などの小売価格が大幅に上昇している中、さらに価格が急騰する可能性があります。

 

米ゼロヘッジは、

 

 

> 政府が国内の乳牛や肉牛の殺処分が鳥インフルエンザと戦う唯一の方法であると主張し始めたら、そこには何か裏の意図があるのではないかと警鐘が鳴らされるだろう。

 

 

と記していますが、裏の意図があってもなくても、食糧価格の高騰に結びつく点では同じことになると見られます。

 

そのゼロヘッジの記事をご紹介します。

 

 

【鳥インフルエンザにより酪農業界のサプライチェーンに混乱 農家による牛の殺処分が増加】

Bird Flu Triggers Supply Chain Snarls In Dairy Industry As "Farmers Increasingly Culled Cows"
zerohedge.com 2024/06/10

 

アメリカ農務省の最新データによると、鳥インフルエンザは、全米10州で少なくとも 80頭の乳牛に感染している。

 

 

 

鳥インフルエンザによる牛の死亡率上昇と、感染拡大防止のために農家が牛を殺処分するリスクに対する懸念が高まっている。これにより、農業地帯全体に経済的ストレスがかかり、供給ショックを引き起こす可能性がある。

 

ロイター通信は、H5N1 ウイルスによる牛群の死亡を認識していたが、ほとんどの牛は回復したと語る農務省の広報担当者に話を聞いた。

 

サウスダコタ州、ミシガン州、テキサス州、オハイオ州、コロラド州での牛の死亡数に関する公式な数字は発表されていない。

 

牛の死亡に関する詳細は次の通りだ。

 

サウスダコタ州では、1,700頭の乳牛を飼育する酪農場が、ウイルス感染から回復しなかった 12頭を殺処分し、二次感染した別の 12頭を殺処分したと、同農場と話をしたサウスダコタ州立大学教授で州農業普及局の獣医師であるラス・デイリー氏は述べた。

 

「一つの病気で牛が病気になると、それが連鎖的に肺炎や消化器系の問題といった他の病気を引き起こします」とデイリー氏は語った。

 

ミシガン州のある農場では、感染した牛 200頭のうち約 10%がウイルスから回復しなかったため殺処分したと、その農場と話をしたミシガン州立大学エクステンションの教育者フィル・ダースト氏は述べた。

 

ミシガン州は、どの州よりも牛の感染が確認されているほか、鳥インフルエンザに感染した米国の酪農従事者 3人のうち 2人がミシガン州で確認されている。

 

コロラド州農務省の広報担当者オルガ・ロバック氏によると、コロラド州では、鳥インフルエンザに感染した牛が牛乳生産に戻らなかったため、一部の酪農場が牛を殺処分したと報告している。

 

オハイオ州農務省の広報担当者メーガン・ハーシュバーガー氏は、感染した牛がオハイオ州および他の感染州で死亡しており、そのほとんどは二次感染によるものだと述べた。

 

テキサス州動物衛生委員会も、鳥インフルエンザが発生した一部の酪農場で二次感染により牛が死亡したことを確認した。

 

当局は州全体での牛の死亡数に関する数字を明らかにすることができなかった。

 

先月、農務省が乳牛を飼育している農家は州間輸送の対象外であると通知したことで、乳製品のサプライチェーンに混乱が生じている。

 

ミネソタ大学の畜産学教授ジョー・アームストロング氏によると、子牛を北部の州から連れてきて搾乳できる状態になるまで育てている南部の酪農場は、群れがウイルス検査で陽性反応を示した際に輸送が遅れることで最も大きな影響を受けているという。

 

「こうしたシステムの中には、動物を絶えず移動させるために作られたものもあり、動物を移動できなければ、あっという間にスペースが足りなくなってしまいます」とアームストロング氏は語った。「これは大きなお金の損失です」 -ブルームバーグ

 

農務省が乳牛の検査を拡大すると発表したことで、感染がさらに明らかになる可能性があり、輸送の遅れが深刻化する可能性がある

 

「この病気のせいで州間の牛の移動が本当に遅くなったのは明らかだ」とゲイブ・バスケス下院議員(民主党、ニューメキシコ州)はブルームバーグに語った。

 

一方、トレーダーたちは、シカゴの牛乳先物価格が 4月初旬以来 27%以上上昇していることに注目している。

 

 

 

酪農家たちが牛を殺処分し、鳥インフルエンザにより供給チェーンが混乱する中で、酪農業界は混乱の初期段階にある可能性がある

 

大きな懸念の一つは、ウイルスが乳牛から肉牛に感染するかどうかだ。もしそうだとすれば、感染拡大を阻止するために肉牛を殺処分すれば、国内の牛の総頭数が 1951年の水準まで激減しているため、小売価格がさらに高騰する可能性がある。

 

以前指摘したように 、政府が国内の乳牛や肉牛の殺処分が鳥インフルエンザと戦う唯一の方法であると主張し始めたら、そこには何か裏の意図があるのではないかと警鐘が鳴らされるだろう