怪獣と戦う自衛隊、出動の法的根拠は? | 因幡のブログ

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 怪獣映画で繰り広げられる自衛隊と怪獣の壮絶な戦いはとても迫力のある映像ですが、さてあの自衛隊はどういった法的根拠で出動しているのでしょうか?

石破茂氏の定例会見
 実はこれに関して、実際に防衛大臣が定例会見で発言したことがあるのです。2007年12月20日、当時の石破茂防衛大臣は定例会見において「(ゴジラの映画で出てくる自衛隊の)いったいなんなんだこの法的根拠は。(中略)ただゴジラがやってきたということになればですよ、これは普通は災害派遣なんでしょうね。それが命令による災害派遣なのか要請による災害派遣かは別にしてですよ。これは災害派遣でしょう、天変地異の類ですからね。」という個人的な見解を示しています。
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個人的な見解とはいえ、当時現職の防衛大臣による発言である以上非常に興味深いものと言えます。

災害派遣とは?
 さて、ではここで言われた災害派遣とはどのようなものなのでしょうか。災害派遣については自衛隊法第83条で次のように定められています。
1 都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。
防衛大臣又はその指定する者は、前項の要請があり、事態やむを得ないと認める場合には、部隊等を救援のため派遣することができる。ただし、天災地変その他の災害に際し、その事態に照らし特に緊急を要し、前項の要請を待ついとまがないと認められるときは、同項の要請を待たないで、部隊等を派遣することができる。
庁舎、営舎その他の防衛省の施設又はこれらの近傍に火災その他の災害が発生した場合においては、部隊等の長は、部隊等を派遣することができる。

 大震災や噴火、洪水などの天変地異において、必要がある場合に自衛隊が出動できるのが災害派遣です。この天変地異の中にゴジラも入るだろうというのが石破大臣(当時)の考えのようです。しかし災害派遣で戦車やミサイルなどを撃ち込むというのは不可能なのでは?と思う方もいるでしょう。しかしこれは可能なのです、実は実際に自衛隊は災害派遣という形で武器を使用したことがあるのです。それが「有害鳥獣駆除」というものです。
 1960年代に北海道で大量繁殖したトドによる漁具が破壊されるなど、漁業に深刻な影響が出ていました。そこで自衛隊に派遣要請が下り、F-86による機銃掃射やM2機関銃などによりトドを駆除したという実績があるのです。つまりゴジラを有害鳥獣と考えれば、武器を使用してこれを駆除することは可能です。

防衛出動は可能なのか?
 では防衛出動という形での対応は可能なのでしょうか。防衛出動となると相手の怪獣の出現が我が国に対する外部からの武力攻撃に当たるということが認められる必要があります。つまり単に自然発生したわけではなく、我が国に侵略する明確な意図を持った国家による攻撃と認められなければならないわけです。少なくともゴジラに関して言えば、これに該当することはないでしょう。つまり防衛出動は不可能と考えられます。ただし例えばなんらかの兵器の類として巨大な怪獣などが来襲した場合には、これに対して防衛出動を発令することは可能かもしれません。

 こうした視点から映画を考えるのも、それはそれで楽しいのかもしれません。