時間をかけて作り上げ
あと一歩で完成しそう
その手前で立ち止まり
ようやく出来たものが
妙につまらなく感じて
大事に温めてきた卵を
握り潰すように捨てた
そんな僕を僕は嫌いだ





傘があるのに差さない女
交差点の角に立ち止まり
濡れるのも気付かぬほど
笑って誰かと電話してた

下を向き背を丸めて急ぐ
透き通る八角形の群れと
雨も弾くような彼女との
好対照な立ち姿に見惚れ

信号待ちの車内の窓越し
規則的に動くワイパーで
拭き取りきれない笑顔だ
そんな幸せもあっていい

警報級の雨の朝午前9時
忘れぬように記録に残す






投げ棄てたゴミが着地するより早く
キャッチしてポケットへと仕舞った
忘れたい思い出ほど覚えているのは
これと同じことの繰り返しだろうか

かつて今と呼んでいたものの連続を
例外なく過去として認識するように
今を今だとして繋いだ先にあるのが
きっと未来と僕らは呼ぶのでしょう

今を生き延びたら領収書は出ますか
明日を生きるための請求書を下さい
未来の希望に命の保証書があるなら
拾った思い出を後悔せず済みそうだ

そうして僕は今日もポケットの中の
思い出を落とさぬように歩くのです
良いことも嫌なことも自分の一部で
失くしちゃいけないって知れたから

歩き続けてきた時間にありがとう