けたたましい目覚ましの音にうんざりしながら大西大和が目を覚ます。
これで何度目だろうかと寝ぼけた頭を働かせる。確か、三度目の目覚ましだったはずだ。起きなければ五分後に再び目覚ましが鳴るように設定しているので、予定より15分遅い起床だ。
今日は試験なので無意識に緊張していたのかもしれない。普段なら五度寝、もしくは起きないことだって多々ある。
今年で大学三回生になる大和は、だらだらと身支度を始める。
一回生のときは、30分前には教室にいないと落ち着かなかったが、今では5分前にいれば十分だ。顔を洗って、携帯を見ると不在着信が3件入っていた。彼女の山田和美だ。
ということは、目覚ましと合わせて6回分寝過ごしたわけか。我ながら呆れる。
どうでもいいことを考えながら、リダイアルする。
「もしもし。」
不機嫌そうな声で和美が電話にでた。
「ごめん。今起きました。」
怒られる前に敬語を使って誤魔化してみようとした。
「30分前だよ。サボる気?」
「この単位落としたらやばいって。5分前には着くよ。」
まったく通用しないな。和美とは、一回生のとき入ったテニスサークルで知り合った。テニスとは名ばかりのサークルで、毎晩合コンを開いてる集団だった。最初の集まりで先輩に睨まれて、すぐにやめることになった。
その時の唯一の収穫が和美だった。
唯一では無いかと、あいつを思い出したが、今は考えるのをやめた。
和美は俺の初めての彼女で、よく気の利く女性だ。周りの評判も良く、俺には過ぎた彼女だ。最初で最後の彼女でもいいくらいだ。もちろん愛想を尽かされなければだが。
「真面目そうなのに、時間にはルーズだよね。悪いギャップだよそれ。」
真面目なトーンで言い放たれ、愛想が尽きるのは、案外早いのかもしれないと危機感を抱いた。
「これから気を付けるよ。それじゃ教室で。」
不機嫌そうな返事が聞こえ、電話が切れた。
急いでスウェットを脱ぎ捨て、着替える。荷物を確認して、家を出る。
エレベーターに乗り込んで、一階のボタンを押す。
そのとき、エレベーターのドアに文字が書いてあるのが目に入った。
マジックで書かれたであろうその文字にはこうあった。
殺すぞ
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