ユウタの小説ブログ

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目を覚ますと大助が菓子を食べていた。何があったのかよくわからなかったが、だんだんと記憶が甦る。
駐輪場に行き、誰かに殴られた所まで思い出して肌が粟立った。
そうだ。俺は襲われたのだ。
後頭部に手をやる。腫れてはいないようだ。だが、鈍い痛みが残っている。
身体を起こすと、テレビを見ていた大助が目を覚ましたことに気付いた。
「よー。大丈夫か?」
間延びした声で話し掛けてくる。さっきのことは夢だったのかと思うが、頭痛の説明がつかない。
「たぶん大丈夫だけど、今の状況を説明して欲しいな。」
わかったという調子で菓子から手を離し、向き直る。
「悪かった大和。こんなことになるとは思わなかった。」
申し訳なさそうな顔でこんな台詞を言う大助が不自然で、如何に自分達が異常な事態に陥っているかを肌で感じた。
「俺は殴られたんだよな?」
「よくわからない。大和が気を失ったのは俺より前なんだな?」
質問を質問で返されて嫌になるが、大助が言ってる意味がわからない。
「何言ってるんだ?お前が俺を助けたんじゃないのか?」
俺は殴られて気を失った。大助が俺を守って部屋まで運んでくれたと想像していた。
「いーから気を失ったとき俺は起きてたのか教えてくれ。それから話す。」
大助の真剣な表情に気圧される。
「俺が殴られたとき、お前はまだ前で歩いてた筈だ。」
大助の顔が強張る。
「そーか。最悪だな。」
状況が把握できない。ただ最悪だという言葉だけが耳に残る。
「説明しろよ。」
大助がわかったと頷く。
「まず、俺も気を失ってた。大和が殴られたのには気付かなかった。」
「気付かなかった?じゃそのままお前も殴られたのか?」
「俺は殴られてない。後ろから首を絞められた。たぶんそのまま落ちた。」
大助が言い終わった後に「死ぬかと思った」と呟いた。
その言葉を聞いてこれがいつもの冗談では無いと悟った。
「犯人は見たのか?」
ダメ元で聞いてみた。
「後ろからいきなりだったからよくわからなかった。」
「だろうな。じゃあ駐輪場にいた奴は関係無かったんだな。」
俺達が張り込んでいた人物は前にいたし、駐輪場から去っていったのを追いかけている最中に襲われたのを思い出した。
「確信はねーけど、無関係じゃないと思うぜ。」
「なんでだよ?」
「俺が最初にどっちが先に意識を失ったか聞いただろ?」
そういえば中々の剣幕で聞いてきたな。
「最初、お前が俺を介抱してくれたのかと思ったんだ。」
「もっとちゃんと説明してくれよ。」
何が言いたいのかわからない。
「一応確認するけど、大和は気を失ってから今まで意識は無かったんだよな?」
「ああ。それがなんか関係あるのか?」
「落ち着いて聞いてくれよ。」
大助が一拍置いて続ける。
「俺が意識を取り戻したとき、大和の部屋にいた。もちろん大和も。」
嫌な予感がした。確かに最悪だ。
「じゃあ、二人とも気を失って先に回復したお前が俺を部屋まで運んでくれたんじゃないってことか?」
頷く大助を見て、全身に悪寒が走る。さっきまでの恐怖とは別物だ。
「俺達を襲った犯人がここまで運んだ?」
大助の話を聞いて出た結論を大助に言う。自分で話している最中も肌が粟立っている。
「駐輪場に俺達以外は犯人しかいない。」
大助が言う。
その通りだ。仮に第三者が意識を失った俺達を介抱してくれたとして、何も言わずに立ち去るのは考えにくい。
つまり、犯人が俺達二人を抱えて自分の部屋に足を踏み入れたのだ。
俺の顔を見て、部屋がわかったとなるとこのマンションの住人だろう。
部屋を見回す。まだこの部屋に犯人が潜んでいるかもしれない。
「部屋の中は確認して、戸締まりもしてるから安心してくれ。」
大助が申し訳なさそうに言う。俺の忠告を無視して招いた事態に、罪悪感を感じているのだろう。
一通り盗られたものが無いかを確認した。特に無くなったものは無いようだ。
「お菓子を盗られなくて良かったな。」
無理をして冗談を言ってみた。大助と二人で少し笑ったが、表情は強張っていた。
バラエティ番組を写しているテレビの笑い声が虚しかった。

「さっきの話だけど、俺達二人を運ぶのに一人では荷が重いってことか?」
駐輪場にいた人物もグルだと主張した大助の話を思い出して問う。
「それもあるし、自分の仲間がつけられてるでも無い限り、いきなり人を襲うとは思えないだろ?」
確かに、駐輪場にいるだけの人間をいきなり襲う奴はいないだろう。何かを見られたと勘違いしたのだろうか。
それにしたって、自転車への悪戯程度の事で暴力行為を働くだろうか。
頭のおかしい奴の考えることはわからない。
「それからこれが机の上に置いてあった。」
大助がA4サイズの紙を取り出す。真剣な顔でこちらを見ている。
「犯人自ら複数いると言ってるわけか」
大助の取り出した紙を見て、軽口を叩いてみたが悪寒は消えることは無かった。


「俺達に関わるな」
A4用紙にこう書かれた文字は、エレベーターに書かれた文字とよく似ていた。






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