芝居「三人出世」《「劇団新」(座長・龍千明)〈平成20年9月公演・みのりの湯柏健康センター〉》 | 大衆演劇の名舞台

大衆演劇の名舞台

全国に150ほどある「大衆演劇」の名舞台を紹介します。

    芝居の外題は「三人出世」。大衆演劇の定番。河内で育った三人の幼友達が、揃って江戸に赴き、「出世」を争うという話。「三年後に日本橋で会おう」と約束して分かれたA(立花智鶴)は「金貸し」、とB(龍千明)は「岡っ引き」の子分になることができたが、C(龍新)だけは、「運悪く」盗賊の手下に・・・。万事、要領の良かったAはともかく、「のろま」で足手まといだったBが岡っ引きの子分になれたのは、親分(大門力也)のおかげだろう。それにしても、一番「若々しく」「運動能力抜群」だったCが、今、世上を騒がす「怪盗・サダキチ」になり果てていようとは・・・。まさに「助けてくれたお人が、悪かった」としか言いようがない。この芝居の眼目は、「恩」。人間、出世するのも「恩」、破滅するのも「恩」、人との関わりを大切にすればするほど「義理」(御恩・奉公)に縛られてしまう、根底には「罪を憎んで人を憎まず」といったヒューマニズムが流れているに違いない。人よりも「金」との関わりを大切にした(Cの有様を嘲った)Aに、Bが話しかける。「幼いとき、おまえが川でおぼれかかったのを助けてくれたのは誰だったか、一番、すばしこかったCではなかったか。Cが助けてくれなかったら、今のお前はない。その恩を忘れてはなるまい」じっと、目をつぶって聞いていたA、引かれて行こうとするCお前に土下座して号泣する。「私が悪かった。許して・・・」
 のろまで「足手まとい」、とぼけた風情を、座長・龍千明は「藤山寛美もどき」で演じていた。ある時は、関東風の「南道郎ばり」、あるときは関西風、なんでもござれの芸風は「名優」への道を着実に歩んでいる。

 


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