芝居「村祭り」《「劇団新」(座長・龍千明)〈平成20年9月公演・みのりの湯柏健康センター〉》 | 大衆演劇の名舞台

大衆演劇の名舞台

全国に150ほどある「大衆演劇」の名舞台を紹介します。

    夜の部、芝居の外題は「村祭り」。山陰地方のある村の話、毎年、嵐が襲来するたびに村の「大切な橋」が流されてしまう。手抜きの工事が原因ではないかと、江戸幕府の役人(花形・龍新)が、部下・マツモトキヨシ(女優・千明みな美)を連れてやって来た。村の川守役(座長・龍千明)が「地形が悪く、よい工事方法が見つからない」と弁明するが、役人は「なんとかせい」の一点張り。居合わせた床屋(立花智鶴)が「人柱を立ててみたら」と提言する。役人は「ウン、それはよい。すぐに人柱を探せ」と二つ返事。かくて川守役に奉公していた長助(子役・龍錦)に白羽の矢が立った、というよりは、孝行息子の長助、日頃の母(秋よう子)の教え(御主人様のために命を捧げなさい)に従って、自分から志願したという次第・・・。子役・龍錦の「初々しさ」「健気さ」、母親役・秋よう子の、素朴で温もりのある「表情」、それでいて「せがれよ、よくやった」という「芯の強さ」を感じさせる「風情」が、悲劇の眼目を際だたせる舞台を作っていた。花形・龍新は、いつもと違って「敵役」、「みんなでよってたかって、自分を悪者扱いする」とぼやいて(その様子が何とも可愛げであったが)、袖に引っ込もうとする瞬間、何かに躓いてひっくり返る。そのタイミングといい、表情といい、まさに「絶妙」、「自然な三枚目」を描出できたのも、天性の「実力」とでもいえようか。その素質は十分と見た。

 


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