週末の朝、玄関を出ると初秋のやわらかな光が愛車の眠るガレージを照らす。
実は今日が晴れると知ってから走りに行こうと画策していたのだ。
二週間ぶりにガレージを開け、静かに愛車に乗り込む。
キーを差し込みイグニッションを回すとフラットシックスのユニットが鼓動を始める。
朝の静寂につつまれた住宅地に響き渡るエキゾーストノートには若干のためらいを感じるのだがそれ以上に私の気持ちを駆り立てる。
家人の『何時に帰ってくるの~(詳しくは家事も手伝わず出かけられていいわね~という前置きがつく)』と冷ややかな視線とため息に、いささかの後ろめたさを感じながらも『俺は遊びに行くのではない走りに行くのだ。他の奴らと一緒にしないでくれ!』と心の中でつぶやき自宅を後にした。
車は都会と人を避け、峠のワインディングを進む。
両手でハンドルを握りひたすら無心で走る、無論音楽もつけない。
排気音の変化でエンジン回転数を予想し素早くパドルでシフトチェンジを行う。
それにしてもこのPDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)のシフトフィールは実に小気味いい。まるで自分の運転がうまくなったのかと錯覚するほど変速が速い。
シフトチェンジを繰り返しながら峠を抜けるとフロントガラスの向こうに海が見える。
国道沿いの駐車帯に車を止めて外に出ると自然がつくり出した造形美に思わず目を奪われた。
青く高大な海、遠くに見える山々の稜線...どれだけの年月をかけてこの美しいロケーションはつくられたのだろう、そんな雄大な大自然に思いを馳せる。
非日常な車と雄大な自然に心癒され帰路へつくのだが趣味で出かけた夫を迎え入れるはずもない現実が待っている。
こんな休日もたまにはいい。
では...Byやま