平野さん独自の世界を確立しました(「ある男」 平野啓一郎) | 「天に月、地に山」 愛知・豊橋で日本酒なら

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皆さんこんばんは。

 

お休みの午後が更けていきます。

 

お休みのゆったりした時間を使って読んだ本。

 

「ある男」 平野啓一郎

 

前作(マチネの終わりに)が本当に素晴らしかった。

 

個人的には平成ナンバー1の大人の恋愛小説だと思いました。

 

平野作品は内容は素晴らしいんだけど、時に難解すぎる帰来がありました。

 

そのマイナス点を見事に払拭したのが全作でした。

 

さて今作も相当話題だったので期待度高めで読みました。

 

主人公はバツイチで子供と共に故郷の実家に戻ってきた女性。

 

実家の文房具店を手伝ったいた所、一人の物静かな男性と知り合い再婚し、もう一人子供をもうけます。

 

前夫との子供とも関係がよく、本当に幸せな日々を送ってました。

 

ある日夫が仕事で事故死をしてしまいます。

 

悲しみにくれるのですが、夫が生前実家との関係が良くないので関わらないで欲しいと言われていたので、極身内だけで葬式を済ませました。

 

しかし、やはり何も伝えないのはいけないと考え、一周忌を終えた後夫の実家に手紙で死を伝えました。

 

直ぐに夫の兄である人物がやってくるのですが、遺影を見てこの男は自分の弟ではなく別人だと言われます。

 

しかし生前聞いていた実家の家族構成や過去にあった事項などは総てその通り合っていたので何がなんだか分からなくなります。

 

そこで離婚の時に世話になった弁護士に調査を依頼する事になります。

 

捜査により戸籍交換ブローカーの存在を知ります。

 

果たして夫は誰なのか?

 

そして別人に入れ替わった目的は?

 

という物語。

 

滅茶苦茶面白かった!

 

前作同様難解な部分が上手く削除されていて読みやすいです。

 

ですが、テーマは物凄く深い。

 

でもそこで重たくならないように、二転三転するミステリー仕立ても用意してあります。

 

平野さん円熟期に入りましたね。

 

本と素晴らしい作品でした。

 

印象に残った言葉があるので書いておきます。

 

(他人の人生を通じて、間接的になら、自分の人生に触れられるんだ。考えなきゃいけないことも考えられる。けど、直接は無理なんだよ。体が拒否してしまう。だから、小説でも読んでいるみたいだって言ったんだ。みんな、自分の苦悩をただ自分だけでは処理できないだろう?誰か、心情を仮托する他人を求めている)

 

平野さんが何十年も書き続けている(分人)というテーマが今作にも入っています。

 

自分自身の事はどうしても理性的にはみれない、しかし別人格を作り上げて自分をもう一度見直してみると、以外に客観的に自分の事も見れるのでしょう。

 

平野さん次作も期待しています。

 

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